第4話
ポチャン…
小さなイルカたちのなかでも、特に小さなイルカが一頭、顔だけを出してフミオの方をみつめた。
「ごめんよ、驚かして…
悪気は、なかったんだ…」
キュイキュイ?
問いかけるようにイルカが鳴く。
「うん…そう。僕はなにもしない…
お前、わかるだろ…」
ピチャン。
かすかな水音をたててイルカはフミオに近づき、フミオの差し出した手にそっとすり寄った。
「それが、あなたの弟くんよ。」
背後から、女の子の静かな声が告げた。
「うん…」
フミオの手に戯れるその小さなイルカは、かすかに青い色をしていた。
七月の、青い空の…
「ほら、これ。」
フミオはイルカの鼻先に、ビーチボールを浮かべてやった。
キュイ?
イルカはそれをつついて、不思議そうにフミオを見上げた。
「お前のために持ってきたんだ。
お前にあげるために。」
キュキュッ!
イルカ はボールをほうり上げ、嬉しそうに鳴いた。
キュッキュッ…キュイキュイ…
キッキッ…キキキッ…
その声に応えるように、青の中から、隠れていたイルカたちがいっせいに飛び出してきた。
花びらのように舞うイルカたちを、フミオはうっとりとながめていた。
「…きれいだねぇ…」
フミオの言葉に、女の子は言った。
「太陽の下で、お父さんやお母さん、それに、お兄さんやお姉さん、友達と遊ぶことのできなかった子供達を、神さまはここへ連れてきて、こうして遊ばせていらっしゃるの。」
「えっ⁈」
振り返ったフミオの目に、女の子の背の白い翼が、太陽をまぶしく反射した。
「うわぁっ!」
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