第3話

「そぉっと、そぉっと、のぞいてごらん。」

女の子はフミオに言った。

フミオは言われた通り、雲の向こう側をのぞいてみた。

そぉっと、そぉっと。


「あっ…」


フミオは小さくさけんだ。


……キュッキュッ…キキキッ…

向こう側の雲は、深い海色をしていた。

そしてそこには、小さな…犬か猫くらいの…ほんとうに小さなイルカが、何頭も何頭も楽しそうに遊んでいた。

雲のように白いイルカたち。

しかしよく見ると、その背は花のような様々な色に、かすかに、優しく染まっていた。

フミオは知らず知らずのうちに、雲の影から身をのりだしていた。

キキキッ!

一頭のイルカがフミオに気づき、驚いたように鳴いた。

チャプン!

チャプチャプン!

小さなイルカたちは、いっせいに青の中に沈んでしまった。

フミオはあわてて雲の影から飛び出した。

「ねえ、まってよ。僕、なにもしないよ!

驚かすつもりはなかったんだよ。」

フミオはイルカたちに、一生懸命呼びかけた。

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