ー後日談ー
天楼の果てよりの使者
少女達の戦いがひと段落したとある日、今尚先の作戦事後処理に奔走する女性——此度の御神殿浸蝕に於いても、後方のバックアップ上の指揮をこなしたヤサカニ
次から次へと押し寄せる事案をしらみ潰しに対処していた彼女、今回ほぼ同時期に発生した断罪天使の案件とクサナギの小さな当主の案件——それについて事の終了を見たとの旨を報告するため……防衛省は
防衛省の要人対応用個室へ、足を運んだヤサカニ裏当主―― 一礼する秘書官を一瞥しソファーへ座したのを確認した
贅沢を絵に描いた様なソファーに対面する二人――事後を報告する方とされる方の双方が、共に安堵の表情で大事無き現在を実感していた。
「全くこのご時世、不穏同時多発なんて肝が冷えましたよ。こちらも事が急過ぎて、防衛長官権限を出す暇も無い事態——正に守護宗家と
「すみません、
「……はぁ……
眼前で国家防衛の長を務める女性——短く切り揃えた御髪に縁無しメガネが光る様は、キャリアウーマン然とするも……何処か幼さが残る容姿は、伝説達の例に漏れず覚醒者の証。
実年齢五十を数えるも、見姿では若いまま歳を重ねた感——しかし本人の前では、それを直接口に出来ぬところだが。
「今回の当ヤサカニ裏門家……さらには
「並びに、今後の事態で再びその援助者達の協力を仰がねばならぬ状況へ向け——防衛省の方でも対処……お願いしますね?」
ふぅと一息ついた防衛省長官……今後の事態と言う言葉で憂鬱が顔を付くも、成長した後輩の真摯な言葉へしかと返答を返す。
「分かりました。国家としても、もはや守護宗家には頭の上がらぬ所——各所への協力要請の後、善処したいと思います。」
「——
最後に締めた長官の表情はある種の覚悟を宿し——
「はい……これからです。ですが、信じましょう……あの子達を。未来を繋ぐ使命を背負った、幼き少女達を——」
同じ面持ちのヤサカニ裏当主も、程なく訪れるであろう来るべき厄災と——それに立ち向かわんとする少女への尽力を誓い——
防衛省長官と共に、部屋の窓の外に映る祖国の未来を——そしてその先を憂いつつ……万事滞り無く会談を進めて行くのであった。
****
暗き深淵が無限に広がり、一際輝く恒星が主なる8つの惑星と大小無数の準惑星を従えるここ――太陽系は火星圏内縁。
その宙域を気炎を吹き上げ一つの目標へと駆ける異様なる影が、陽光の輝きを船体に反射させ進む。
「船内及び船外の異常無し!本艦はこれより、火星圏を越え地球圏へと入ります!」
「了解した。閣下……これからいかがいたしま――」
「
「アハハハっ!だって――もう二人のやり取りが相変わらずで……苦し☆」
「そうですわ、お姉様。もういい加減観念してはいかがです?」
宇宙を進む艦影――しかしその光景は異様そのもの。
地球は地上で言う所の海洋艦の姿が大半を占める影が、量子論的な真空の宇宙を駆ける様は異様以外の何ものでもない――が、これこそ地球は三神守護宗家と……そのお抱え技術屋集団【
その艦影はかつて暁の昇る国家の旧時代――
無念を残し海洋へ沈んだ偉大なる超弩級戦艦の名を継ぐモノ――現代の厳しい
そしてその艦橋となる場所に居座るは、先の地球と魔界防衛作戦で英雄的活躍を見せた少女――
ジュノー・ヴァルナグスこと、
「あのなぁ……カミラまでそれに乗っかる必要はないんだぞ?――全く……自ら宣言したはいい物の、まさかそんな要らぬ
「――ああ、本当にレゾンは往生際が悪いですね?」
「お前は楽しそうだな……ベル。目が笑ってるぞ(汗)」
同時に――現在その武蔵総括を担うは、魔界の事件で死と同義である重罪を告げられる寸前……姉である吸血鬼に救われた幼き少女。
姉となった赤き烈風……魔界において究極と言われた【竜魔王ブラド】の座に手を伸ばし――最強の力を手にした
その少女が執り行った血族の儀によって、吸血鬼一族の新たな仲間に加わったのがカミラ・オルフェス――今武蔵総監を担う少女である。
「それはそうと……何か不思議だね。最初は私もレゾンちゃんも、未開の地へ
「そう……だな。私としては、世界が完全に塗り替えられた感じだが——」
「ですよね~~。レゾンは正直何も知らないお登りさんでしたから~~☆」
「……お前はもう少し、遠慮という物を所持してくれないか?ベル(汗)」
「ベルも【
それを
その少女達のやり取りはもはや長年付き添った親友の如し——しかし、彼女達が因果の中で出会ったのは数年と数えぬ奇跡の導き。
導かれた奇跡がさらにその先——より大きな奇跡である、吸血鬼の姉妹再開さえも招来したのだ。
そして今、齎された奇跡によって救済された光の世界——始まりの大地、蒼き地球への道筋を取る魔界勢は……奇跡の一端とも言える、光に住まう人間の友人達の元へ
「——なぁテセラ。あのミネルバ様とシュウも……今の私達の様な気持ちで地球へ向かったんだろうな。」
「うん……そだね。きっとシスターテセラと再開するのを、何よりも楽しみにしてたはずだよ?そう……今の私達が——」
「地球の素敵なお友達……
「キーキー五月蝿い
冗談めいた会話で、金色の王女と赤き吸血鬼が心の底より笑い合う。
その睦まじさへ羨望を向ける
「ではお嬢様方……これより本艦は地球圏航行に当たり
「——その際、動力機関出力低下に伴う全体的な航行速度低下が発生します。その弊害として予定済みであります到着日程の遅れ……さらには有事の攻撃力及び防衛力減少が顕著となりますので、準備を怠り無く願います。」
「ああ、了解した……
「分かりました。いろいろありがとうございます。」
宗家お抱え技術屋集団である
茶髪のツーブロックが勇ましい鋭き双眸の
「それでは技術制限下の元ではありますが——この武蔵と共に、
超戦艦総監を任された吸血鬼の妹の声へ、首肯後前方モニター群へ向き直る統括部長——その血に宿る地球は日本、戦国時代の大海賊……【村上水軍】の血統を沸き立たせ——
「アイ・マム!これより武蔵は地球――日本へ向けた、最終航路へと着きます!全艦備え……武蔵、前進せよ!」
「「「アイアイ・サー!!」」」
猛る
彼女達が地球へ
そこにいるのは天の魔界の一世界——
時にして——
地球は日本において、断罪天使の少女がヴァチカンより【
その後……今まで戦いの中で守られる側であった一人の少女が——遂に訪れたる試練へと、過酷なる一歩を踏み入れる頃の出来事。
かつて世界を襲った未曾有の大災害——
ルーベンス・アーレッドとユニヒ・エラの忘れ形見である少女……アイシャ・エラ・アーレッド——又の名を、
地球最大最悪の霊災である、【ヤマタノオロチ】を封じし【封印の都 カガワ】にて……永き試練の最初の一歩を踏み出していた。
そして世界は——その日を境に、人類史上最も過酷な時代へ突入する事となる——
****アナザーストーリー 討滅の桜花編 弐 —完—****
本編第三部
魔業のアイシャ編へ続く——
魔法少女戦録ブレイズ 討滅の桜花 弐 鋼鉄の羽蛍 @3869927
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