冷静に狂っている。だが、おそろしさよりは奇妙なユーモアが漂っている。たとえるなら「真っ白」な小説。だがそれは清潔感の白ではなく、「空虚」の白。しかし、読み進めていくうちに、どうしようもなく笑えてくる、ような気がする。このバランス感覚はなかなか描けない。貴方もこの不思議な世界に足を踏み入れてみませんか。
読む手が止まらないほど惹き付けられる素敵な(?)世界観で大変面白かったです。我々の住む世界とは倫理観が違う世界、だけど"違う"ことは壊れている事でも欠落している事でも無くて、それが日常である、それだけ。淡々と綴られる理解不能な全てを、どうしてか受け入れられてしまう。そんな不思議で美しい感覚を味わえる作品でした。
小説の説明文に惹かれて読みました。人間や動物、虫などの垣根が無くなった世界でのお話なのですが、作中で繰り返される『日常』というものに対して、作者の強いメッセージを個人的には感じました。作中では暗喩めいたモチーフが多数登場します。文章の比喩のセンスもよく、読みすすめる手と、「これはどういうことなんだろ……?」と考え続ける思考が止まらず、一気読みしてしまいました。こちらを刺してくるような小説を読みたい方におすすめです。