サッちゃん

作者 和泉真弓

80

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★★★ Excellent!!!

少なくとも日本で生活する現代人は、他者との関わりなしでは生きていけないだろう。その人との関りの形も刻々と変化する。
『サッちゃん』は、人との関わりの変化に試される姉妹を描いた物語だ。互いに投影し、ときに自分の抱える負の感情に傷つき、それでも光を求めて止まない二人の姿を、丁寧に。つまりは生きていくものへの肯定の物語だと定義したい。
軽々しいお話ではない。けれでも読後には他では味わえない清々しさが待っていますよ!
和泉さんの文章には独特の空気がある。芳香である。

★★★ Excellent!!!

皆命の価値は平等だ。

そういう言葉を綴るのは簡単ですが、事実としてそんなことを考えている人はきっとほとんどいないし、逆に大半の人が誰かを見下したり、自分を卑下したりしているのではないかと思います。
けれど、それを表現するのは凄く難しい。

この作品は、静かに、けれども明瞭にそのことを伝えてきます。
沈鬱とした話なのに、最後、どこかすっきりとするお話でした。

作者さま、素敵な物語をありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

洒落た各話タイトル、重いテーマを扱いながらさらりと読める口当たり、過不足のない表現。
誤字ひとつ見つからない、言葉との丁寧な関わり。
一話読んだだけで実力派の書き手さんであることがわかります。

「重い病気の姉」を描くにあたり、ウェッティな感情を出しすぎず、ほどほどに現実的なところも大変好感触でした。
恋人との軽妙なやりとりの描写や、SNSという現代的なモチーフの取り扱いが卓抜で、読者と物語との距離をうんと縮めてくれます。

伏線かな?と思われた部分が特に回収されなかったりして、でもそれが物語をリアリティーあるものにしていたりして、生身の人間たちが動いている空気感を濃く感じました。

タイトルの「サッちゃん」は姉の幸子のこと――ではあるのですが、童謡のサッちゃんのようにバナナ、つまり与えられた幸福を半分しか食べられないのは冴子の方なのではないか。
シンプルなタイトルの深淵に想いを馳せると、胸がいっぱいになります。

カクヨムでこんなに積極的にレビューを書きたい気持ちになったのは初めてです。
わたしが探していたのは、こういう書き手さんでした。