最終話【祭りは終わらない】

 60型の大型テレビにはサッカーボールを胸の辺りで抱え大声でなにか怒鳴っているゴールキーパーが————固まっていた。

「こんなトコで止めてんじゃねえ、とっとと動かせよ!」さらに先輩にどやしつけられる。

 その画面にはサッカー・ワールドカップ決勝トーナメント、日本代表の初の8強入りがかかった大一番が映し出されていたのだった。

 むろんレコーダーの静止ボタンのせいでキーパーが固まっているわけではない。

「ロスタイム含め残り約5分、日本サッカーがこの時間にどれほどの悲劇を積み上げてきたことか」俺は言った。

「なに言ってんだ! このままじゃW杯が終わらないだろーがっ!」



 俺は能力者でありながらごくごく普通の一般人でしかない先輩に一目置いている。これまで彼はあまりに的確に物事の本質を衝いてきた。それは一度や二度じゃないからだ。


 俺は悲劇を避けるためだけに能力を使っていると自分に言い聞かせている。が、常に本当の意味でそうなっているのかどうか。


 先輩の言うとおりこのままならW杯は終わらない。

 最後の5分間という時間帯が訪れても、俺に5分以上の時間が流れても、祭りはずっと終わらない。


                                 (了)

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カベ 〜最後の5分間〜 祭りは終わらない。 齋藤 龍彦 @TTT-SSS

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