日常の風景が、色を変える瞬間がきっとある。

 満員電車を中軸に展開される日常を描いたオムニバス形式の短編集。
 変わらない日常。変わらない風景。しかし、ふとして起こる痛み。
 そんな痛みを伴って、今日も主人公たちは満員電車に乗る。
 人々を飲み込んで、すし詰め状態にして、ただ時間通りに運んでいく電車。確かに、この光景は日常でありながら異常だ。
 主人公たちは友人関係に傷ついたり、社会的に傷ついたり、家庭に悩んだりしながらこの異常な日常を送る。その小さくて大きい痛みは、どんな方でも読めば共感できるものばかりだ。
 しかし、1話1話の最後に、主人公たちがふと、日常から解放されるような希望が描かれているのが良かった。
 是非、御一読ください。