その10


 折り鶴は飛んだのか?


 私は飛べるのか? 


 あれから何十年も時が流れて、私も少しは大人になったことだろう。

 千羽いたら千羽の思いがあるように、人の数だけ人の思いのあり方も変わるだろう。

 自分の気持ちを伝えたければ、かたちにしなければ伝わらないこともわかった。

 自分の気持ちをコントロールする術も、誰かに何かを伝えるための術も身につけたかもしれない。

 苦しんでいる誰かのために、心を翼に乗せて、銀の水面を渡ってゆくことができるのかもしれない。 


 今の私なら、飛べるかもしれないのだ。


 でも、やはり折り鶴の思い出は苦い。

 私は、人間ちょっぴり弱くなって、ハムコに似てあまえっ子になった。




 =折り鶴は飛んだのか?/終わり=

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折り鶴は飛んだのか? わたなべ りえ @riehime

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