第3話 調査1

 「おい、少年。早くしたまえ。でないと置いて行くぞ。」

 大家は、まだ眠そうな少年を連れ出して行く自称名探偵をマンションのベランダから見下ろしていた。

「まさかこんな朝早くに来るなんて。彼も災難ね……。」

 昨日のことを思い出しつつ、連れ出される彼の運のなさを憂いた。

 昨日は、彼の都合により依頼内容だけで終わってしまい話はまた明日とのことで、その場はお開きとなった。

「確かに明日とは言ったけれども。朝一番からなんて、流石に私でも考えなかったわね。」

 自分が依頼者にならなくてよかったとつくづく思った。

「彼には悪いけれど、これも彼女の為だし許してくれるわよね。」

 なかなか、目が覚めきらない彼に対して、一発ビンタをかました自称名探偵を見て。

 ……帰ったら少し慰めてあげよう。

 ちょっとかわいそうになってきた。

「まあ、この事件が解決することが、彼へのお詫びにもなるし、どんな答えを出すか、期待してるわよ?自称名探偵さん。」

 大家は遠ざかっていく背中を見ながら呟いた。さもこの事件も結末を知ってるかのような口ぶりで———



「出会って2日目の人にビンタをされたのは、初めてですよ……。」

「なんだ?癖にでもなったのか?残念だが、君の性癖に付き合ってる暇わないよ。」

「勝手に変な性癖をつけないでください。」

「そうか?君も思春期の高校生だろ?だから、こんな美人にビンタなんてされたら快感なのかと思ってしまったよ。」

 少年はため息しつつ呟いた。

「……昨日は、美人でかっこいい人だと思って緊張したのに、まさか残念美人だったなんて………」

 京子は、少年の呟きを聞くと失礼なだなと思いながら答えた。

「何処が残念美人なんだね。こんな美人でクールでさらに頭も良いなんて、私くらいじゃないかね。」

「そういうところが残念なんですよ……。」

 自画自賛して、満足げにしていると少年がまた、ため息をしつつ呟いてきた。

「君にはまだ大人の女性は早いのだよ。同級生にでも欲情しているといいさ。」

 少年はまた、ため息をした。


「で、なんで学校にきたんですか?。」

 目的地である学校に到着すると、少年が京子に聞いた。

「君は何を言ってるんだい?調査に聞いたに決まってるじゃないか。事務所でまた話を聞いても良かったんだが、あそこは暑い。それに現場で話しをした方が気付くこともあるかもしれないしな。」

 京子が、少年にこれだから素人はと思っていると、再度少年が聞いた。

「まあ、そのくらいはわかります。それで、なんで日曜日で学校に入ることも出来ないのに学校に来たんですか?。」

 少年の問いに、京子は固まった。少年は固まった京子に向け言葉を続けた。

「普通に考えればわかるじゃないですか。今日は日曜で学校は閉まってますよ。

まして、事件の後ですよ?まさか、あっさりと入れとでも思ったんですか?。」

 少年の指摘に京子は、

 ……しまった。楽しみすぎて失念していた……。

 忘れていたことを思い出した京子であったが、先程、自画自賛した手前そんなことを知られるわけにはいかないと思い慌てて否定した。

「し、知っていたに決まっているだろう!。現場はこの学校全体の事を言ったのだよ。学校の周囲を歩きながら、話しを聞くってことだよ。」

「……そうですか。そう言うことにしといてあげますよ。」

「う、うむ。」

 京子が少年が話しを切ってくれたことに、安堵していると少年が聞いてきた。

「じゃあ、どうしますか?このまま外ではしても良いんですが……」

「ん?」

 何か不都合でもあるのか?と思っていると少年が微笑みながら言った。

「今日も暑くなりますよ?」

 ——このクソガキッ!?

 京子は、思った。昨日の少年よ、戻ってこいと。

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京子さんはただの探偵です! @848

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