騒がしい女子校の日常

ばやし

騒がしい女子校の日常

            

私の学校は普通じゃない…。


今日は月曜日、また騒々しい毎日が始まる、この女子校で!


「おいおいハナ!ちょっと聞いてよ!さっき電車で見かけた男子高校生、めちゃくちゃカッコよかったんだよね!!」


朝から上機嫌で話しかけてくるのは、親友のミサ、週の初めでこのテンションについていくのは、なかなか厳しいものである。ちなみにハナは私の名前。

「へぇ~~、そうなんだぁ~。最近熱いからって朝から大きく股開いて、スカートで風あおいでいるようじゃ彼氏なんかできないわよ…フッ」

こんな感じで、テキトーに話をサラッと返す。

私のテキトーな返答を聞き、頬をプクッとアニメの可愛らしい女の子のように膨らませているミサを見て、私はギロっと睨む。

すると、「ん~~、なぁ~にしてるんだい君たちぃ~~!!」

耳に刺さるような大きな声で話しかけてきたやつは、私とミサが何かやり取りをしていると、必ず後から混ざってくるこれまた親友のカナ。

「またミサが、カッコイイ男子高校生見つけたんだって。話しかけられないくせにさっ。」

「そ~んなこと言っちゃいけないよ!!ミサだってなんか色々頑張っているのだよ!!」

「そーだよ、そーだよ、毎日頑張ってメイクしてるんだよ?!こんなに可愛い私を世の男子高校生はみんな彼女にしたいはずだよ?絶対に!!」

おいおい、絶対とか言っちゃったよ?!どんだけ自信あるんだよ!、と思いつつミサを見るとまだガニ股でスカートをあおいでいた。

「いくらメイク頑張ってもこれじゃあ無理だわ」

「相変わらずハナは厳しいね~、そうね、ミサはもう少し私みたいに髪のケアを重点的にした方がいいわよ!それにちょっとメイクが濃すぎかもね。それに今は青色のリップが流行りだから今日買いなさい。」

「あ、青でありますか…。」

まるで今のトレンドを知り尽くしているような口ぶりで淡々と指摘していくカナ。

おそらく青のリップが流行りというのは、デタラメであろう。

でもカナに指摘されると不思議に信じてしまうのだ。何もしないで普通にしていれば、見た目もまあまあ可愛くて、おしとやかな感じで、この前ニュースで見た男子に人気な、お嬢様系女子に見える。

そしてふとカナを見ると、気づかないうちに椅子に足を乗っけていて、イチゴパンツが丸見え状態になっていた。

もぉ~感心してたらこれだよ!!

「お~~~~い!お前らどこのチンピラじゃぁ!そんな変な格好してモテテクの話するなぁぁ!!!パンツ丸見えじゃんか!!女たるもの見えないところまで綺麗にしているのが基本!!いくら外で努力していても、それが出来なくちゃモテ期は一生来ないぞ!わかったか~!」

ふぅ~言ってやった!!言ってやったぞ私は!!!どうだ!!何も言い返せないだろ!!!

「はぁ~、何言っちゃってんのよ?そんなこと最初っから分かってるわよ。気が付いた頃には、もう男子との会話の仕方も忘れちゃったしさ、ただの自己満足でしかないモテトークを繰り広げていたのさ。」

「そうだよ、いくら努力してもまず、どこで男子と巡り逢うんだね?私は運命なんか信じてないのよ…。だから、パンツ見えてるくらいで私たちは全然気にしませんっ!!!」

「いや気にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

おいおいおいおい!女子校悲しすぎだろ!!そんなところだったのか?!

つーかそれ言ったらもうお終いだよ!

ああ、今年で高校二年生…。ここは中高一貫だから、中学から合わせるともう女子校五年目、女子校のプロといってもいいくらいにはなっている。なんか入学当時からいずれこんなことになってしまうのではないかと思っていたが、これは予想以上…。男子の目が無い環境に慣れ過ぎて、私もいつの間にか非常識が常識になっていないか心配だ。

「そんでさ~~なぜか超落ち込んでるハナは置いといて、さっき言ったカッコいい男子高校生の写真遠くからだけどコッソリ撮ってきたんだよね、見る?ビックリするくらいカッコいいよ?」

超落ち込んでる私を置いていき、さっきのイケメントークの続きが始まった。

「えっ?!マジマジ!!やるじゃんミサ!」

「まあね~~これでもイケメンハンター五年目だからねぇ~なめてもらっちゃ!イ・ケ・ナ・イ・ゾっ♡」

いつの間にかミサは高校生ながら謎の職業に就いていた。そして最後めちゃくちゃウザい!!

「じゃあ見せるね、これが私のベストォォォオ~」

「ちょっと待って!」

いきなりカナがお得意の大声で、ノンストップなミサの話を中断させた。

「ど、どうしたんだよいきなり…ビックリしたじゃんか…。」

意外とシリアスな顔でトークを中断させたカナ、珍しく何か気に障ったことでもあったのだろうか?

「いや、どんなイケメンだったのか、私が当ててみたいからまだ言わないでちょうだいな少女よ」

クッソどうでもいいことだった!

「あはは、そうだよね、了解!じ、じゃあ当ててみて!」

そう言いつつも若干引いているミサであった。

本当にどうでもいいとこに、変なおふざけ演技をカマしてほしくない。

カナは演劇部に所属しているだけあって、演技がめちゃくちゃ上手い。多分これおふざけで言ってるんだろうなぁ、と思っていてもイキナリ来る謎演技に圧倒され、これは何かあったのかと信じてしまう。

カナは誰かを信じ込ませるというスキルを持っているようだ。決してやってはいけないが、彼女は誰かを騙して稼ぐ仕事に向いているのかもしれない。

「え~っとね~、赤の帽子を被っていて、茶髪で~スポーツ刈りで~ジーパンにシャツinしている男子高校生!」

「ってどんな奴だ!!そんな男子高校生見たことないわ!」

これは突っ込まずにはいられなかった。そんなの珍解答にも程がある。完全にウケ狙いであるはずだ!!

「えっ?!うそ?!そんなことないよぉ~~!!だってこの前ニュースで流行りだって見たもん!あれ~違ったのかなぁ~」

ん?マジ…?この様子だと、ウケ狙いでも無さそう…なのか?

「ウッソぴょぉぉ~~~んっ!!こんなのありえないっしょww!!ウケ狙いでしたぁ!」

「おい!!!!!」

「おい!!!!!」

やっぱりかぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!

そして思わずミサも突っ込んでしまっていた。

「はぁ~、じゃあカナの高度なボケをスルーして回答いっちゃうよぉ~!!」

やっと回答、ほんの一分間なのにこんなに疲れたのは久しぶりだ。

「えっとね、まずブレザーで~」

なにやらスマホの画面隠しつつ、チラチラ見てニヤニヤしているミサ。

ミサがニヤつくほどのカッコイイ男子高校生なのだろうか、いつの間にか私もミサの話に夢中になっていた。

「俳優の鈴木太郎に似てて~」

おおっ!マジか!私が最近注目してるイケメン俳優じゃないですか?!

名前は超シンプルだけど、顔はすっごくイケメンで、しかもイケボ!!これ声優もいけちゃうんじゃないですか?ってくらい凄い人である。

私は鈴木太郎のそういうところに惹かれている。

「そして高身長なのである!」

うおぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!

ミサの話だけだと、どストライクで私のタイプなんですけど!

これを聞いてしまったら早く顔が見たくて仕方がなかった。

「ミサっ!!それ早く見せなさい!!!!」

「あっ、ちょっとハナ!!」

あ…。

「ってこれ私の弟じゃねぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

「アハハハハッwwwハナったらすっごく鼻息ヤバかったよww」

「しっかり写真撮ったから♡」

や、やられたぁぁぁぁぁぁ

「いや~、この前ハナのタイプ聞いた時からこの計画企んでてね、絶対に食いつくだろうなぁって思ってたのよ!そんで最後に実の弟の写真を見せて、ビックリしてる顔を撮ろうとしてたんだけど、予想以上のクオリティの写真が撮れてこちらは大満足です!ゴチになります!」

最悪だ、まさかこんなことを仕掛けてくるとは、さすが女子校、恐るべし。

「ミサ!カナ!いつか絶対に仕返ししてやるからね!」

「おーう!いつでも待ってるよ!」

マジで男子がいなくて良かった…。こんな日常を男子に見られていたら、と思うとゾッとする。

ああ、本当に…

「女子校で良かったぁぁぁぁぁぁ!!」

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騒がしい女子校の日常 ばやし @bayshi555

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