プラネテスを巡る騒動

 「プラネテス」という作品(アニメ版)に対しかつて宇宙開発団体職員に属していた某権威による発言が発端として騒動が勃発、作者が謝罪に追い込まれる(一流の皮肉のようにも見えた)という事態に発展した。

 某権威は「プラネテス」に於ける様々な表現を間違っていると言い、観るのも苦痛だと言い切っていた。更に発言は続いた。彼は主人公のような人物は論外で、自分のところに来たら即、切ると言った。言い放ったと言えるものだった。また「弊害」や「実害」が起きているとも言った。

 これら発言に対し、Twitterなどで多数の非難の声が上がったのである。


 フィクションを褒めると同時に批判する権利は誰にもある。よって某権威が「プラネテス」批判すること自体は間違ってはいない。問題はその言い方がかなり感情的で憎悪すら籠っているのが丸わかりだったこと、侮蔑や嘲笑の意識も垣間見えていたこと、何よりも権威者による表現に対する圧力になっていたことだ。以前「彼方のアストラ」をディスった者がいたが、あれはどことも知れぬ有象無象による暴言だったので影響力などなくまだマシだったが(それでも問題はある)、今回のは権威者によるものなので深刻だ。

 圧力とは何かと言うと、言っている者が宇宙開発分野の権威であることと、「弊害」や「実害」なるものが生じていると言ったことだ。これは作品とその作者に対するプレッシャーとなり得る。その「弊害」や「実害」なるものの実態の説明があれば世間の反応もまた変わったかもしれないが、彼は何も説明しなかった。これもいかん。


 犯罪事件が起きた時などにアニメや漫画のせいにして表現規制を主張する者がいるが、これは論外だ。実際影響を受けて犯罪を犯す者はいるが、だからと言って作品が悪いのではない。あくまでも犯罪に走った者が悪いのだ。現実と虚構の区別がつかないのであり、それはその者の精神に問題があると言える。よって為すべきことはメンタルケアや青少年の教育の在り方であり、表現規制ではない。これは大人も教育対象にすべきかもしれない。

 今回の騒動では犯罪が起きたわけではないが、某権威が「弊害」や「実害」と言ったことで現実と結び付けている。それが何なのか本人による説明がない以上分からないが、ただはっきりしていることは、ここでも現実と虚構の区別ができていないことと、批判対象を作品に向けていることだ。某権威は「弊害」や「実害」をもたらした者に対して批判すべきであり作品に向けるのは論外だ。

 「弊害」を起こした者は「プラネテス」に影響されて間違った知識を植え付けられ、それに基づいて仕事をしたということか? それが某権威に悪影響を与えたのか? それが事実だとしても、それはその者の問題であり、作品にはない。作品がよほど公序良俗に反するものでない限り、規制対象にしてはならない。


 騒動は数日で終息した。某権威は矛を収め、作者と作品のファンに対して謝罪した。批判の拡大が収まらなかったからだろう。

 結局、言い方の悪さ(かなり感情的で馬鹿にした言い方だったこと)と現実と虚構を混ぜたことが悪かったのだ。彼にとって「プラネテス」は好みではなかったのだろうし、その感想を述べるのはいいが、それ以外のことも混ぜて言い出したからいけなかったのだ。これを教訓として以後は発言に気を付けてほしいものだ。



 某権威に同調する者もいた。特に目立ったのはかつてとあるテレビ局を買収しようとして騒動を起こしたり、株式関係で検挙・有罪判決を受け、現在は宇宙開発関連企業に投資している人物だった。そもそもかなりアレな人なので、苦笑いを浮かべるしかなかった。ただ影響力もそれなりにある人物(某掲示板製作者で現在フランス在住の人やメンタリストを名乗り弱者切り捨て発言で炎上した人などと同じ意味で)なので笑って済ましてはいけないのかもしれない。あの人は謝罪したのかな? 確認していない。

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