花むすめものがたり

泉由良

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 あのアネモネもね、

 あのね、彼女のアネモネもね、

 私は知ってはいたんだよ、

 哀しくなりながらも、懸命に立っていたということを。

 私は彼女のことを、とても大切に思っていたし、

 でもそれと同じぐらいに色んなひとを大事にしたいと思っていたから、

 彼女はそんな私がのことが、厭だったのだと、そう思うよ、今ならね。


 私は周りのひとたちは、みんな大切にして元気でいて欲しいと願っていたけれど、ときには自分でも厭気が差した、そういう自分に。それは幾つも植木を育てることとは違うことなんだって、解っていたのに、ひとに対してきちんと振る舞えなかった。

 私はまるで、こっちの鉢植えの花に水を遣っては、あっちの草木が枯れないように栄養を運んでいって、それが済んだらまた違う植木鉢を見にいって雑草をきちんと取ってやる、庭師のような立ち居振る舞いだと自分でも思った。庭師と庭園の関係ならば別に構わないと思うけれど、順々に並んだ植木鉢への世話のように気配りする自分がとっても厭だった。そんな自分をどうしようも出来なかった。

 それが、少女時代の記憶だ。


 あのアネモネもね、いつかは咲くよね、きっとね。

 あの、哀しい唄ばかり書いていたあの子もね、

 いつかはわらえると思うよ、きっとね。

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