# ゆめる

  ゆめる



かざぐるま、りゅうりゅう廻る

ひゅーひゅーめぐるもの、それは輪廻

祖父母の家の鴨居にぶら下がっていた、花ぐるま

きっとお祭りで買って貰ったもの

けれどそれは忘れてしまったこと

ひゅーひゅーたがうもの、それが輪廻


ずっかずっかずっかずっか、

  それを軍靴の音だと錯覚するのは狂気なのだろうか

    ずっかずっかずっかずっか、

     知らない空襲警報に怯えるのは滑稽だろうか

ずっかずっかずんずんずだだんずだだん、銃声がするような気がする


ざっくざっくざっくざっく、それは歩みの音

 ざっくざっくざっくざっく、揃っているのはなんだか怖い


視えない音を聞いて怯える

花ぐるま廻る、ゆめるゆめるゆめる視界

揺れる揺れる揺れる憂い

せめるせめるせめぐ旋律

かたるかたるかたるカタルシス

ゆめるゆめるゆめるゆめるゆめる

りゅうりゅう廻るはかざぐるま


*


祖父の部屋の障子を開け放して、隣のお座敷の窓を開けて見ていると

そよ風は祖母が庭に植えた花をのせて

春ならばちゅーりっぷ、夏は向日葵とプチトマト

秋はこすもす、冬は雪に飾られる千両と万両


花は手前が揺れると奥が揺れ、そうすると手前の花がまた揺れる

ゆれて、ゆれ合う

あのかざぐるまのあった祖父母の家には今、何の草木も生えてはいない


     





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