ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウ、ウナ…ギ……

以星 大悟(旧・咖喱家)

ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウ、ウナ…ギ……

 回るお寿司と回らないお寿司。

 その両方に必ずあるメニューで幼い頃の私が食べられたのは玉子とウナギだけだった、私が幼い頃は肉系は基本的に無いかサイドメニューかで昔からあるお寿司屋さんには基本的に肉系は無かった。

 

 それで何が問題かと言うと実は幼い頃の私は生もの全般が駄目だった。

 どれくらい駄目かと言うと「パクっ!おろろろろろ……」と即リバースする程に苦手だった、苦手と言うより舌が拒絶して条件反射で吐いてしまうというのが正確だ。

 何故なら極端にお腹が弱かった私は基本的に火を通した物しか食べていなかった、生なのは果物くらいでそれ以外は火を通すのが当たり前だった。

 だから生ものに対して舌が慣れていなくて拒絶していた。

 今は社会人になって「生ものは駄目です」なんて言えず必死に食べていた所為か舌が慣れたみたいで美味しいとは思わないが吐く程ではなくなった。


 それでも出来れば寿司屋は行きたくない、生魚は今でも苦手だ。

 そして正直に言うとウナギも得意じゃない。

 かば焼きのタレは好きだ。

 照り焼きやハニーマスタードといった甘い系の味付けは好きなのでタレだけでなら私は好きだ、まあ一番はカレーなんだけどもここでカレーについて語るのは場違いだから語らない。


 食べられない訳じゃない、けど出来れば食べたくない。

 それがウナギに対する私の印象だ。

 その理由は幼少期の体験だ。

 よく回る方のお寿司屋で私は玉子と唯一ある肉系のお寿司を頼んでいた。


「ハムすい!」

「本当に好きね。はい」

「ありがとう」


 ちなみに私は心の中で「これしか食えなんだよ!」と叫んでいた。

 しかし根っからの昔気質の父は私が肉系のお寿司を食べるのが気に入らなかったらしい、サイドメニューの唐揚げなど以ての外で機嫌が良ければ問題無いのだが悪ければ帰りの車の中で延々と精神面をすり減らす方向で叱責された。

 玉子でも場合によっては同じだ。

 ハムすしも食べ過ぎたら叱責される。

 

 そんな私のとれる選択肢は生魚を食べて吐く、か延々とウナギを食べるかの二択だった。

 そして私はウナギを食べた。

 小学生で170㎝を超えていた大柄の私は人の数倍食べる子供だった。

 一皿二皿なんて食べた内に入らない。

 十皿ですら腹三分目にも届かない。

 そんな大食漢の私は寿司屋に行くと比較的に安牌の玉子とウナギだけを食べ続けた。


「ウナギ食べられるのならいいじゃん!」


 と、友人は言っていたが考えてみて欲しい。

 ウナギ・ウナギ・ウナギ・玉子・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ………。

 これが三十皿とか四十皿、後半になったらゲシュタルト崩壊を起こしそうになる程に私はウナギを食べ続けた。


 当時の私は両親から心底嫌われていたから拒否権は無い。

 溺愛されている兄が「寿司食べに行きたい!」と言えば速攻で夕飯はお寿司だ。

 最悪、一週間に3回はウナギだ。

 空気を読んで姉が「ねぇ時にはうどんが食べたい!」と言えば兄が我儘を言わなければ好物のうどんが食べれた。

 あ、当時の私はカレーが嫌いでした。


 しかしそれでも外食は食べ放題か寿司だ。


 そして寿司屋ではウナギだ。

 延々とウナギだけを食べ続ける。


 ウナギ・ウナギ・ウナギ・玉子・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・うなぎ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・鰻・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・うなぎ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・鰻・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ・ウナギ。


 これが幼少期の楽しい筈の家族で外食の、一番心に焼き付いている思い出だ。

 正直に言って私は出来るならウナギが食べたくない。

 あとあの小骨が不快で不快で、それも出来れば食べたくない理由だったりする。



 

 

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