第3話

もう季節がいつで今は何時だかわからなくなっていた。

「ご主人様」の帰りを待つ日々。

内定が決まっていたのに。

公務員になる筈だったのに、

僕は帰りを待っている。

ドアノブをひねる音。嬉しい。

彼女の着ているコートで外は冬だという事を認識する。

靴を脱ぐご主人様に駆け寄る。

じゃらじゃら。脚に繋げられた鎖が甘美な音を奏でる。

ああ、失いたくない。

「寂しかった。」

ご主人様の首に手を回し咥内の舌を味わう。

切なさが背筋を駆けて行く様な感覚に酔いしれる。

「はぁ。」ご主人様は昔僕がした様に、さも面倒臭そうに溜息を吐くと次の瞬間、僕の頬を引っ叩いた。

僕の後頭部を力強く踏みつけながら何度も怒鳴りつけた。

「敬語も使えないの。馬鹿じゃないの。」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

僕は彼女にはもう逆らえない。

彼女が日に一度くれる甘ったるい薬物無しでは正常に物事を考えられないし、それ以上に彼女から離れたくない。

僕はプライドと地位を捨て、彼女の「奴隷」になった。


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肉欲と乾いた体液 梅練り @umeneri_gohan

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