エピローグ (わたし) 告訴 / 逮捕 / 紅ちゃんとの別れ
紅ちゃんは、わたしと一緒に学校に帰った。彼女は校長先生にお願いした。
「児童福祉司の人を、呼んでください」
紅ちゃんは、やってきた福祉司さんに今までのことを打ちあけた。
もちろん、児童福祉事務所で収まる話ではなかった。紅ちゃんは兵庫県警の刑事課に告訴状を出した。
紅ちゃんの表のスマホにも、裏のスマホにも、Torブラウザーはインストールされていなかった。ダークウェブ上の被害を誰から知らされたか、と刑事さんに聞かれた紅ちゃんは、「いつだったか、夜のパーティーで会った知らない大人に見せつけられ、笑いものにされた」と答えたという。
クロコダイバーこと、曲原喜十朗は逮捕された。同時に、彼の海岸沿いのマンションには兵庫県警の家宅捜索が入っていた。クロコはダークウェブ内の汚らわしい店を消去することもできない。二十数名の女の子を毒牙にかけ、延べ10キロもの麻薬を売りさばいていたことが明らかになった。新聞記者の人やテレビの取材陣がサイテーションハイツに殺到し、神戸市須磨区は再び、猟奇犯罪の震源地として全国に悪名をとどろかせることになった。
紅ちゃんは、結局、遠い別の町へ引っ越すことになった。
わたしは、紅ちゃんに一枚の写真を贈った。図書室で見つけた、紅ちゃんとお父さんが肩を並べ、仲良く走っている写真。図書委員の六年生のお姉さんに頼んだら、撮影した先生を紹介してくれたのだ。先生には詳しい事情は話せなかったけど、快くプリントしてくれた。
「やっぱり、調べものしとったんやないか。油断ならんやつや」
紅ちゃんは、それでも、うれしそうだった。
第一部 明日の国からの侵略者 完
E-ロボット・ハッカー 星向 純 @redoceanswimmer
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