水分子の思い出

作者 星向 純

13

5人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

新しい。
読んでいて感じたのは、そんな感想でした。

一話目を開いたときに思ったのは『勉強になりそう』。
しかし、読み進めていくうちに実に様々な感想が湧いてきました。

悲しい物語がありながらも、温かい物語に繋がっていく。
それでも専門的な知識は一話目から変わらず盛り込まれている。

正直、この一万文字に満たない文章で、これほどまで多くの感情を揺さぶられるとは思わなかった。
ぜひ、皆さんにも読んでいただきたい作品です。


★★★ Excellent!!!

語り手は水分子という小さき「私」。

「私」は流れるままに自然を巡り、人工を巡る。

先ずはその類を見ない観察眼、発想力、そしてスケールの大きさを、流れゆくままに感じ取るべきだろう。

水分子という小さき目線はありふれた日常に出会う。
それは街に溢れる何の変哲もない混合物であったり、注目しなければその存在すら気付かない微生物であったり。

深い知識と知見に裏打ちされ、軽快な言葉遣いと端正な文章で描かれた「私」の旅は見る者全てにミクロを想起させる。

しかしある女の子との邂逅によって、この「口語自由詩」は、たちまちに「物語」へと変貌する。

巧みな文章によるミクロ視点からマクロ視点への移り変わり、読者はうんとこの物語に惹き込まれる。

この短編が単なる擬人法に終始しないのはその点にあるのだろう。

自然という無限の循環。この物語は水分子という無機質の形を越えて、読者に有機的な人生を啓蒙する。

カクヨムスタンダードとは一線を画した傑作。
もっと伸びるべきと声を大にして言いたい作品だ。