美味しいものが食べたい。そんな人として当たり前の欲求のために奔走する、ほっこり胸温まるお話です。耳慣れない食材や料理名にも、思わず生唾を飲み込んでしまいそうになる。ひとえに魔女さんの食べっぷりが素敵でした。誰かが美味しそうに食べる姿というのは、やはり見てて気持ちが良いものですね。明日はどんなグルメと出会えるのか。二人の関係性が生み出すのは、どのような味なのか。きっとどちらもまた、極上の美味なのでしょう。そう胸を踊らせるばかりです。
異世界の生き物に思いを馳せるとき、姿形の他にどうしても気にしてやまないのが「味」だ。食べるというのは能動的な楽しみで、旨いものは人を幸せにさせる。ただただ美味いものが、真に迫って旨いように見える。それだけでいい。それだけがいい。
全話サクッと興味深く読めました。観光というよりも名産品や郷土料理を求めて主人公の二人が各地を訪れます。特色のある一癖も二癖もある登場人物もいい味を出しています。異世界ものですからその世界観とか独特の名前を持つ食物、そこの住人たちを想像するのも楽しいですね。食い気だけでなく色気もほんのちょっぴり効いてます。
魔女オリヴィエが、樹人のサルメロを従えて『美味しいモノ』を食べに行くお話です。各話の末尾には、どこか異国情緒溢れる料理名とコース内容が記されており、食事風景も秀逸。夕食のために二人が立ち寄ったビストロは、本当にあったら行ってみたい、と思う。それは、私が現在空腹だからではないはず。オリヴィエとサルメロの関係も淡く、だけど想像を膨らませる形で記されており、このお話にもう少しおつきあいしたいな、と思うところで、さらりと躱されます。ぜひぜひ、続編を希望したい作品です。
異世界食堂の中で最高峰の作品です。食材の表現が上手く利用しており、実際に食べたくなる表現に引き込まれました。