第8話昔日の思い出

 暑い夏の日、太陽が照りつけ、木々が生い茂る一本道


 少年は背は低くスポーティーな服を来て、手には木の棒を持っている


 少年は周りを見渡していた、辺りには人がいない

 近くには田んぼを守っているカカシが立っている、そのカカシは薄汚れていて今にも倒れてしまいそうなほどのボロさだった。


 少年はビビり、すぐさま走り去る


 少年は次なる道を進む、決して後ろには戻らない、

 近くにはおんぼろな小屋、ここで雨風しのぐには大変そう


「おっ、ぼうず来たか」


 小屋の中で低く枯れた声が聞こえた

 少年は嬉しそうな顔で近くにいく。


 そこにいたのは髭を長く生やしタンクトップを着た中年のおじさんがいた。


「おじさん、こんにちは!」


 少年はおじさんに向かって元気よくそう言う。


「こんにちは、今日も元気だねぇ」


 それに対しておじさんも快く返す。


「ねぇこれ何作ってんの?」


 そう言い少年は近づく。

 子供ということもあり、体力がある。


 おじさんはそんな少年の顔を微笑ましそうに見つめる。


「こらこら、あんまり近くに来るんでない」


「何作ってんの?」


 好奇心旺盛だった少年はそれに対して何度も繰り返し尋ねる。


「……刀じゃよ、どう作るか知りたいかい?」


「うん!知りたい!」


 おじさんは話してくれた。


 少年は気になったことを何度も質問する。子供だからこその好奇心だ。


「まぁ、これくらいかな?」


「ありがとう!なんか分かった気がする!」


「分かった気って…」


 おじさんは苦笑いしながら頭をかいた。

 フケがパラパラと舞うのを見て、自分が少年であった事が既に遠い昔のことであるのだと、自覚させられる。


「それじゃあ!また!」


「またこいよ、待ってるから」


 少年は嬉しそうに夕闇を背に自宅への道を帰っていった。







 ─────







 為治は気がつくと自分の部屋にいた。


 俺は夢をみたのだろうか…うっすらと昔の事を覚えている…

 今日も両親は仕事に出ている…


 といってもここ最近帰ってきてないが

 俺は一人で身支度をしてふと思った


 昔の田舎に行こうか、だがどうしようか…お土産は渡すとしてあとは……詠美を誘おうかな…


 俺は外に出て隣の詠美の家のインターホンを押した

 しばらくしたら


「はい、塩沢です」


 と声がした…声からして母親のようだ


「ええと…隣の澤田です、詠美はいますでしょうか?


「ごめんなさいねぇ、詠美は今友達と遊びに行ってるのよ、どうやら誕生日会とか言ってたな…」


「あ…そうですか…」


 どうやら友達との約束があって行けないようだ、仕方ない、一人で行くか。







 ──────








 ええっと………何処だっけ…

 スマホで経路を確認しながら駅を乗り継ぎしていく。


 バスを降りたらそこには自然が溢れかえっていた


 この場所で合ってるんだよな?間違ってたら困る。

 記憶をたどりに歩いていくが、間違っているように感じてしまい、ソワソワしてしまう。


 そして実際に迷っていたようだ。

 スマホで場所を調べようとしてもスマホは圏外


「まずいな…」


 近くを見ても人がいる気配は無い、

 あるとすれば田んぼの近くに無理やり建て直したカカシだけだ


「あれ…この光景…このカカシ…」


 顔の部分は夢で見た物と同じだ


 為治は戻らずに歩く

 その場にある道を歩く

 田んぼの反対側にある森は切り株だけになっている箇所がある


「多分そこかな…?」


 森には小屋が見える…以前よりボロボロになっている


「誰かいませんか……?」


 辺りには人が住んだ形跡がある

 斧や大量の薪がある


 とりあえず小屋にノックしてみたが誰も来ない


 入ってみて小屋を確認した、電気は付く、水は出る、どうやら普通に使えるようだ。


「ん、そこにいるのは誰だ?」


 突如低く潰れた声がした

 ビビって黙り込んでいると、為治の後ろを通り、小屋の中に人が中に入ってくる。


 その人は黒いジャケットを着ており年老いていた


「もしかして…忠康かい…」


「いや…顔は似ていますが違います、俺は為治です」


「そうか…為治か……どこかで聞いたなぁ」


「忠康は俺の父親の名前ですが」


「……ほぉ…そうかね…昔、刀に興味津々だった子供か」


 おじさんは小屋の天井を見上げている。


「あぁ、そうなりますね」


 為治は小屋の中を見回しながら返答する。


「これほど大きくなるとはな…、そうだ、また刀について話さないか?」


「話しましょうか、その為に来たんですから」


 為治は様々な事を聞いた。刀についての情報のほかに学校や彼女のことも


「木がカマイタチの子供に斬り倒された事があるんだが……しっておるか?」


「カマイタチの子供?」


「昔あったんじゃよ、夏の暖かい日に子供のような泣き声で鳴きながら木が倒れていったんじゃよ、その木はノコギリやチェーンソーで切られたのではなくなにか刀に近いもので切られたんじゃよ、普通の刀では木は切れないし何故、子供のような声がしたのだろうか、いまだに分かってない、その謎の事ををカマイタチの子供って言ったんじゃ」


「そんなのが昔に…」







 ─────








 日が暮れ始めると、為治はおじさんに礼の言葉を言い、自宅へと帰宅する。


 そういや名前を聞いてなかったな…


 電車で帰り家に付く頃、何かの血の跡があったのを見つけた。


 血、だと…?

 この近くで殺人事件でも起きたのか?


 でもそれにしては警察がいる様子がない。それに肝心の被害者はどこに……?


 血の跡をおっていくと詠美が血だらけで倒れていた。


「詠美!?どうした!?」


「ぅ……くぅ……」


 何故血だらけで倒れていたのか……事件にでも巻き込まれたのか?


 為治は即座に電話を取り出すと救急車を呼んだ。

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Chain and blade―鎖と刃の能力者― 海老旗魚 @Ebikajiki0625

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