第7話三沢乃々香

 あれから一週間後

 詠美の手術は成功し、体にも特に異常はなく、なんとか学校に行けるそうだ。


 俺と詠美は家が違うので登校したのか分からないが詠美の母に聞いたら詠美は普通に学校に行ったようだ。


 心配だった為とてもほっとしている。

 これからもアイツを支えてやらないと……








 ──────







 三沢 乃々香 (みつざわ ののか)


 小学校時代からの幼なじみ


 いつもハンドスピナーを持っておりポケットに手をいれてるときは回してるという噂


 見た目はスタイルが良い、本人は何も運動はしていないと言ってる


 昔からおっちょこちょいで頼りないが頭がとても良くて皆に好かれる


 何故か為治はそんな彼女が放っておけなくなる。


 宇宙研究会の副部長でもあっているだけあり天体に非常に興味がある。


 為治も付き合わされて昔はよく天体観測にいったものだ。

 三沢は為治とは違う席だし、最近は話すこともなくなってしまったが、未だに為治は友達だと思っている。


 三沢と為治の席は離れてしまっているし、なんというか話しかけづらいオーラというのだろうか、そんな感じがある。昔はもっと気軽に話していたんだがな……


 何故こんな話をしたのか、それは今日、ずっと休んでいた時の分のノートを送って貰ったのが原因だ。香川でも良かったのだが何故か三沢が送ってくれると言い出したらしいのだ。


 まあこちらとしてはどちらでも良いのでそれを承諾した。


「為治、ノート写しといたから」


 三沢はそう言うとノートを渡してくれた。


「ああ、ありがとう」


「うん、どういたしまして」


 三沢は渡し終えるとそのまま為治に背を向けて席へと着く。

 なんか素っ気なさすぎないか……


 ……まあいいけどね

 為治も席に着くと授業の準備を始める。







 ──────








 チャイムが鳴り、授業が終わったということが分かる。


 授業が終わるとみんなそれまでの静寂が嘘かのようにがうるさくなりだすのだろう。今更思うようなことではないだろうが


 詠美は………

 先に……帰ったわけではなかった。


 校門の裏で為治をちゃんと待ってくれていた


 帰宅中、詠美が何やら自分に関する噂を聞いたというのだ。

 まあ、十中八九休んでいた間のことだろう、感じが悪いな


 家に着くととりあえず部屋へ戻り、こないだ図書室で借りた小説を一冊取り出し、栞を取り出し読み始める。


 小説というものは不思議であると思う。考えれば考えるほどに奥が深く、一度読んだだけでは分からなかったことも二度読めば気づくことだってあるのだ


 為治や詠美の身に起こる出来事もそう考えれば小説のようなものでもあるかもしれない


 いや、人生は小説とはやはり違う

 小説はどんだけ共感出来る内容であっても所詮は他人が書いた世界であり、読んでる側はその中の登場人物ですらなければ主人公とも似ているだけでその人物自身と自分では明らかに違うといえる部分は必ずある。千差万別ということだ。誰一人同じ人間はいないし代わりもいない。幾ら自分と似た境遇や、人物がいたとしてもそれは現実のことでない時点で客観的に見ることしか出来ないのであろう。


 だが学べることはある、知識を蓄えたいという目的なのであれば小説という一つのコンテンツを読むことは有効な手段であるといえる、と俺は思うのだ。


 ……俺は何を言ってるんだろうな、ハハッ

 そう言いながらベッドへともたれこむ

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