叶わないと知っていても

@hii_ra_gi

第1話

私には夢があった。 いいえ、今も夢みてる。

ただ 叶わない現実だけが私の隣に居座っている。



「おとうさん おかあさん!わたしね!おっきくなったら女優さんになるの!!!」

『さくらならなれるわよ お母さん 応援してるわよ』

『お父さんだって応援してるからな』

なんだか照れくさくてえへへと笑って

その場でクルリとステップを踏んでみると

『『さくらっ!』』

お父さんとお母さんの慌てた声がした。

気づいたらもう遅かった…

目の前がフェードアウトしていく。

頭が痛くて手に生暖かいものが流れている

視界が真っ暗になって頭がポーっとしてきた。


ピッ………ピッ……ピッ…

目が覚めたら見渡す限り白だった。

心の無い機械音がここがどこなのか教えてくれる。

腕には沢山の点滴の管が繋がっていて

口元には酸素マスクがついていた。

私は生かされているんだ ぼんやりとそんなことが頭をよぎった。



ドアが開く音がした。

ドアの向こうにはお母さんがいて、お母さんに向かって笑おうとしたら、お母さんに抱きしめられふわりと香る桜の香りが鼻先をかすめる。

目の前には目に涙をいっぱいに溜めたお母さんがいて、お母さんの体温を体いっぱいに感じてようやく口にした言葉は

「泣きすぎだよ、お母さん」

だった。

お母さんはくしゃりと笑って

「おかえりなさい」

と少し鼻声だったけど返してくれた。


そこから お母さんと沢山の話をした。

私はずっと眠っていたこと。

小学3年生から中学3年生までずっと

起きれたとしても何らかの障害が残るだろうといわれたこと。

私の場合赤血球が少なくて酸素の運搬が難しいから病院から出れないだろうということ。

それは私の夢が叶わないということだった

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