時を超える愛達の物語。

 タイムスリップと恋愛。この要素を取り入れた作品は現代文学で言えば『時をかける少女』、古典で言えば『浦島太郎』、漫画ならば『ドラえもん』など、枚挙にいとまがない。

 不可能を超えて愛する者と再会するという要素でいえば、源流は『オルフェウス』や『イザナギとイザナミ』などの神話にすら遡ることができるだろう。

 本作は言うなれば、それらの作品から丁寧に抽出されたエッセンス、熟練のバリスタの手による一杯の珈琲のような作品だ。

 時をかける少女の如き青春の甘酸っぱさ。
 浦島太郎を思わせる、愛の代償への苦悩。
 オルフェウスやイザナギが黄泉路を行くが如く、主人公は愛するものを求め、過去の世界を直走る。

 果たして、彼は先人の轍を踏むこと無く、前だけを見て進めるのか?
 それとも過去の闇を振り返り、愛するものを再び失うのか?

 その結末は是非、この作品を読んで知って頂きたい。

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