第一章 ノートを持ってノートへ

世界には、不思議な

事がある。

神さまを愛する

人の手に十字架の

傷が出来たり、

仏さまを愛する人の

額の真ん中に同じように

ホクロが出来たり。

まぁ、仏さまの額の

ものはホクロではない

けれど。







本当に不思議なこと

ばかりだ。






どうやら私も

その一人らしい。





日本。愛媛県、松山市。

「動かないで!」

え?私が何をしてるかって?

それは…






「ボス、そこを動かないで!」

ボスとは、私が飼って

いる…と、思っている

野良猫のこと。そして、

私は、画家の先生の

弟子で画家の卵の桜木 花。






「ハハハ…猫は気まぐれ、

無理に呼んでも来やしないよ」

今、喋ったのが、

師匠の畠中 頼[はたなか たより]

先生。自分では、気づかない

超・天然な性格。

見た目はそんな風には

見えないけれど。

それでも、先生は

私には正反対に異性に

とてもモテる。

その事が複雑になったのは

いつからかだろうな。






私は、そうやって

ぼーっとしていると。

先生の声。

「アハハハ!!!

なんでだろ~!!!」

先生は、地面に大の字に

寝そべって、ボスの

仲間の大勢の猫達に、

乗っかられたり、舐められたり、

持っていた煮干しを

噛じられたり、身体の面積

のほぼを猫で占めていた。






先生は、それがツボに

ハマったのか寝そべって

大笑いしていた。







…間抜けだ。

だけど、そんな先生が

私は好きなのかもしれない。





そんな時、ボスが

気まぐれに逃げ出した。





私は、それを追ってゆく。

「あ、待ってよ!ボス!」

先生は、心配そうに

私を見ていた。そして、

私に1言声をかけてくれた。





「今夜はご馳走だから、

早めに、帰っておいでー!」

私は頷くと、ボスの後を

追って行った。





暫くボスを見失わずに

いたけれど、ついに

見失ってしまった。

私は、ボスを絵にしたかった。





あの、気ままでいて

堂々として、何者にも

屈せずに、生きている。

そんな生き様が好きだった。






そのうち暗くなって、

1番星が輝き出した。

スマホに、先生から

LINEが入る。






___今、どこ?

心配で心配で

晩御飯が美味しくない。

わけ分かんない。







私は、プッと吹き出した。

「どこの女子のLINEよ、

しかも晩御飯食べてるし!

分からんのは、こっちだわ!」





一刻も早くアトリエに

帰ってご飯を食べなければ、

さすがにお腹が

空いてきた。





「ボスー!!!

どこー?!!」





その時、シャッターが

閉まった魚屋の前で

こぼれた魚肉を頬張る猫を

見つけた。






ボスだ。

ボスは、私に気づくと

タッと走り出した。




私は慌てて走り出す。

「待ってよ…!!!」

そして、ボスを追いかけて

暗い路地に入った。






その時、急に段差を

踏み外したような

ぐらつきと浮遊感を

覚える。






強い衝撃と共に

私は気を失った。

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アンティーク・ノヴァ 愛染 ひなた @rurulolo88sekai

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