不審者

下校時間。


真っ直ぐ帰る気にならなかった私は街をふらついていた。

時間はあっという間に過ぎ、もう20時。


そろそろ帰ろう…。


街から少し離れて人通りの少ない暗い道を歩く。

すると少し離れたところにスーツを着た男の人が立っていた。

こんなところで1人で立ってるなんて、少し気持ち悪い。

歩く速度を少し早めて、私はその人の横を通り過ぎた。

通り過ぎる時にちらっと目をやると、男の人と目が合った。

ゾワッとした。

通り過ぎて、少し距離が出来たところでホッと肩の力を抜いた。


「お姉さん、高校生?何してるの?」


肩の力をを抜いた直後だった。

後ろから声をかけられた。

相手は見なくてもわかる、さっきの男の人だ。


「あの、ごめんなさい。急いでるので」


それだけ言って先を急ごうとすると、後ろから足音はついてくる。


「ねぇ、お金欲しくない?ボク、お金余ってるからあげるよ」


お金、別にいらないし。

どうでもいいからはやく離れてほしい。

けどこの当たりに人通りはなく、誰にも助けを求められない。

それに、私を助けてくれる人なんてこの世に存在しない。

だって、私だもん。

誰にも必要とされてない私を助けてくれる人なんていない。

だったらいっそこの男の人と遊んだらいいのかな。

私なんてどうにでもなっちゃえばいいんだ。


「お金くれるの?欲しいなぁ」


足を止め、振り返り、微笑んだ。

すると男の人も微笑んで、

「じゃあ行こうか」

そう言って私の手を引いた。

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アイされたい女の子。 夢の。 @y_s__oO

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