『感情がわからない』
友人に、後輩くんのような奴がいます。僕は彼がそう告げる度に、返すのです。
『そんなの、俺だってわからない。きっと、誰にも、深くはわからないことだよ』
それは冷たい返しかもしれないけど、僕にはどうしてもそうとしか思えなくて。感情なんて、わかるわけない。諦めてしまう自分がずっと胸の内に潜んでました。
だから、無感動な後輩の感情を切り開こうと努力をする先輩の姿が、美しくて。自らの混沌とした心と向き合いながら、彼の無感動な心を探りながら、変わっていく二人の様子が、奇跡みたいに輝いて見えました。夏の白昼みたいに、眩しくて、鮮やかな物語でした。