夏空と君と私と、感情の話。

作者 木染維月

35

13人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

『感情がわからない』
友人に、後輩くんのような奴がいます。僕は彼がそう告げる度に、返すのです。
『そんなの、俺だってわからない。きっと、誰にも、深くはわからないことだよ』
それは冷たい返しかもしれないけど、僕にはどうしてもそうとしか思えなくて。感情なんて、わかるわけない。諦めてしまう自分がずっと胸の内に潜んでました。
だから、無感動な後輩の感情を切り開こうと努力をする先輩の姿が、美しくて。自らの混沌とした心と向き合いながら、彼の無感動な心を探りながら、変わっていく二人の様子が、奇跡みたいに輝いて見えました。夏の白昼みたいに、眩しくて、鮮やかな物語でした。

★★ Very Good!!

文芸部でひとり執筆活動を続ける先輩部員と、一切執筆をしない後輩部員。
強い感情が分からないと言う後輩部員と、そんな彼に密かに強い感情を抱く先輩部員の物語。

二人の“間”や心情が、季節の情景描写を挟んで表現されていて、丁寧に言葉を紡ぎ、文章を綴っているのが伝わります。
ゆったりとした時間の経過と共に、どこか諦念を孕んだ空気が、夕方の閉ざされた個室に充満しているような、読んでいる間はその独特な雰囲気に身を任せたくなる、個人的にはそう思える作品です。
IV話で動き始めた物語の行く末を、静かに見守りたいと思います。