序章

月明かりが照らす 輪廻の環の下 の 桜並木。

花弁が 散りゆく中 、 其の幻想的な

光景にはそぐわない 土煙が上がった 。

煙が 無くなると 月に 照らされ

白銀に光る尾が 九つ 。

耳から 髪までもが 白銀 に染まっていて

一瞬 爺 かと 思うと その顔立ちは

その様な 考えを 吹き飛ばす 程に

整っていて 、 凜としていた 。

その 九尾 の 正体は

桜蘭会おうらんかいの頭領 、

皋揆さつきだった 。


桜蘭会とは、輪廻の環の一帯を仕切る

強きあやかし達が 集う 会。

輪廻の環を護り、輪廻転生の均衡を保つ

迚も重要な役割を担っている。


皋揆の 目線は 唯 一点を 見つめていた 。

その先には 、手に狐火を 携え

皋揆 を 見て 妖艶な 笑みを 浮かべる

銀刹会ぎんせつかいの 頭領

黒雪くろせつ が いた 。


銀刹会は、桜蘭会とは逆に輪廻の環の一帯を

狙い、度々襲撃を仕掛ける組織。

その目的は輪廻転生の均衡を壊し

自分達がその指揮権を握ろうとしている。

何故なら、指揮権を握れば

死者を蘇生する。生者を死へ直結させる。

その様なことが容易に出来てしまうからだ。


「 相も変わらず 弱いな 、 皋揆 。

彼の時 、彼の侭 我の 優秀なる“ 弟子 ”

として 傍に 居れば 良かったものを … 」

黒雪 は 何処か 懐かしそうに 、

そして 寂しそうに 呟いた 。

この二人は 昔 、 未だ 皋揆 の 尾が 一本で 黒雪の 尾が 九本 だった頃 、

皋揆 は 黒雪 の元で 弟子として

戦術 体術 妖術 の 三つを 習っていた 。

だが、 “ 或る事 ” を きっかけに

其の 縁を 切り 、 自立した 。

そして 、 皋揆 は 桜蘭会 を 造り

頭領として 輪廻の環を 護る 使命を

担っていた 。


「 黙れ 。師弟の 縁を 切る事に 成った

要因は … 全て 貴様だろう … ! 」

手に 携えていた 狐火を 黒雪に 放つ 。

感情に 任せ 攻撃していた 。

その行動を 見透かしたように

黒雪は 全ての 狐火 を 避けた 。

だが 皋揆も 引けを取らない 。

地面を 蹴り 跳躍 すると

相手に 急接近し、 躰を まるで 鞠の様に

蹴り飛ばした 。

黒雪の 躰は 桜並木 の 傍らに或る

灯籠並木 に 突っ込んでいった 。

其れでも 勢いが 消えることはなく

十数個 灯籠を 破壊した後 その場から

動かなく なった。

そして黒雪の 口から

吐息を 漏らすかの 様に こう 呟いた。

「 相も変わらない … 馬鹿 力め … 」


皋揆は 黒雪が 動かなくなった 事を

確認すると その場から 立ち去った 。

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桜と雪が舞う環の下 皋揆 カナ @satuki-0316

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