桜と雪が舞う環の下

皋揆 カナ

第一章

桜蘭会 の 者達が住む 言わば本部 。

会議室や 個人の部屋 が 或る中 、

一室に 医療機器 等々が 揃っている

部屋が 在った 。

その部屋で 皋揆は 治療を 受けていた 。


「痛っ … 痛いぞ 小百合 … 」

「煩い 。 突然 飛び出したかと 思えば

怪我を負って 帰ってくるなんて…」

手際よく包帯を 巻いていく のは

黒髪が 艶やかで 、肌は 白く透き通り、

黒の生地に 百合が 咲き誇る着物が似合う

白虎の 小百合 だった 。

白虎 とはいっても 常に 獣の姿をしては

居らず 、 戦闘時のみ白虎 に なる らしい。


「治癒の 妖術を 使える奴は 居らぬのか?」

皋揆 が 不満げに ポツリと 呟くと

小百合が 反応し 、

「 なんだ? 私の 治療では 不満か? 」

と 笑顔で 告げる 顔とは 反面に

手元では 皋揆の 傷口に 消毒液が

とくとくと 注ぎ込まれていた 。

「痛い痛い痛い痛い痛いッ!!

じ、 冗談 だぁぁぁぁっ !!

済まなかった !! 済まなかった !!」

目に 涙を 浮かべ 痛みと 共に

謝罪の意を 叫ぶ 皋揆 を 見ると

満足げに 消毒液 を 拭き取る

小百合が いた 。


手当が終わり かけた頃、

廊下から どたどたと 騒がしい

足音が 聞こえてきた 。

「 皋揆 様 ぁぁぁぁっ ! 」

皋揆 が 手当てを受けた 腕等を

回したりして 慣らしていると、

前方から 小さい 何かが 叫びながら

飛びついてきた 。

「 なっ、 !? 」

不意打ち だったのか、

皋揆のは支えきれず 倒れてしまった。


「は、 はくか … 」

自身の 腹の方に 目を向けると

満面に 笑みを 浮かべた

茨木童子 、狛 が 此方を 見ていた 。

「はい!狛 で 御座います! 」

「毎度 心配して呉れているのは

有難いのだが … 」

「 はい? 」

皋揆 も 厭な訳では ないのだが、

伯に不意打ちで 強烈な 一発を

病み上がりに いれられるのは

何処か 辛いもの があるのだ。

でも 其れを 如何伝えるか 分からず

今日こんにちまで 引き摺ってきている 。

「 … 否、 何でもない。 」

そして今回も 云えぬ侭だ。


狛が 不思議そうに 為ていると

何かを 思い出した様に はっとして

こう 云い 始めた 。

「 そうだ! 皋揆様! 」

「 次は 如何した、… ? 」

「 皋揆様に お伝えしたい事が ! 」

「 伝えたい事? 」

やけに 狛は 焦った様子で

皋揆に話し掛けているので 、

皋揆は少し不安を感じながら 聞き返した。

「 最近 、 此処らで “ 妖狩り ” 成る者が

出没 している そうなのです。

其の妖狩り は 変わっていて 、

九尾 ばかりを 狙う そうで… 。

念のため 、 皋揆様にも お伝え

しようと 思いまして … 」

狛の 話が終わると 皋揆は一瞬神妙な顔を

するが、 直ぐに 何時もの 笑顔に 戻り、

狛に 「 有り難う 」 と 告げ 頭を 撫でた 。

狛が 満足げに 走り出すのを

母親の様に 着いていく 小百合を

横目に流し 、 皋揆は ボソリと 呟いた 。

「 … 妖狩り … 。 」

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