引き分け

「でも、なぜそんな力が貴方にあるの?」


四条さんの質問がぐさりと突き刺さる。図星を突かれたらこんな気分になるんだな?とても勉強になるね?今日はいろいろ新発見がある日なことだなぁ。しみじみ。


「一体どこでそんな魔法級のチカラを!?」


こちらに詰め寄って来そうな勢いの四条さん。え、なに?なんか聞き流してはいけないような単語が聞こえた気がするけど。突っ込んだらダメな気がする。お返しにナイフを突っ込まれると救急沙汰だ。


さてどうしよう。静丘涼矢の人生において最大の機転が今、求められている!脳の回転数を上げろ!じゃないとナイフだぞ!側頭部を人差し指でぐりぐりすればなんか名案でるかな!?宗純もやってたしね!?うぐぐぐぐぐ………


「ねぇ!!」

「おまえだ!!」

「!?」


四条さんがキレて机を叩いた衝撃に驚き、僕は彼女に「犯人はおまえだ!」とばかりにやってしまう。あ、そうか。思いついた。


「人に聞くときは、まず自分から。そう習いませんでした……?」

「……何の話?」

「僕みたいな善良な男子高校生捕まえて魔女裁判を始める手練手管ですよ!!いったいどうしてそんな力が貴女にあるんです!?ぜひとも教えて欲しいなぁ!?」


四条さんの口角がヒクついた。これは勝機。効果的な二の句を考えねばならない。そうなんだよな。理不尽この上ない。なんで同級生なんかにナイフで脅されないけないんだ。反抗する権利が間違いなく僕にあるはずなのだ。有名な哲学者も言ってた。


さぁてなんて言い返す?とにかく片っ端から論破してけちょんけちょんだ。言葉の刃の鋭さを体感させてやるぜ……?


カチリ、きーんこーんかーんこーん。


二人の沈黙を、時計の針と鐘の音が破っていく。


「……覚えてろよ」


憎々しげにこちらを睨んでから、捨て台詞していく四条野郎。けっ、こっちの台詞だっての……。ガクリ、と膝から力が抜けて教壇に落ちる。ジーーーンと骨に響いて痛い。


あ〜〜〜怖かった。怖かったよホント。一時期はどうなるものかと思った。テレビでやってるコンビニ強盗をボッコボコにする系の動画の人はホントすごい。そう思える。それ系だと相手は銃だから余計すごい。射程はナイフの何倍もあるなかよくぶん殴れるよな。すごい。ホント尊敬する。弟子入りさせてくれ。


「帰るか」


家着いたらそのまま眠りたい。泥のように眠りたい。あわよくば引き篭もりになりたい。え、だって怖いし。それとも何か護身術でも覚えるべきか?特にそういう心得が無くてもすぐに習得できるものがあるんだろうか。でも、そういうのに詳しいやつって居たっけ。


………あ、居るか。居るね。護身術とかに詳しいわけじゃないけど、詳しそうなのを知ってそうなのが。えー。でも羽田にどうやって説明するんだこの状況。まぁ、とにかく喋ってからだな。

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化野高校生徒名簿 亀馬つむり @unknown1009

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