同居人に対する突き放した残酷さと愛情のようなものが渾然としていて、人間はとても一面だけではわからないのだと、ひやりとする作品。
いやもう、ひやっとするので、読んでみてください。
水仙の可憐な姿と香り、それでいて毒を持つ二面性が、メタファーとなっていて鮮やか。
同居人のことをひたすら足が臭いと心の中でこき下ろし、両足を切り落とせないかとまで考える。その割に一緒に料理も作るし、車椅子生活になったら世話をするつもりでいる。
たぶんこの主人公は、外面はとてもやさしい。外見に似合わない毒を秘めているのは水仙と同じ。
でも、その毒の部分は、本人すら思い出しては忘れを繰り返すのでしょう。
水仙の、そして人間の、相反する二面性が当たり前に同居している様が描かれていて、読後思わず「人間って……!」と頭を抱える、そんな作品です。