氷点の記憶
春風月葉
氷点の記憶
彼女はシャボン玉のような人間だった。
周りの風向きに合わせてふらふらとする様も、繊細で少しの傷で壊れてしまいそうなところも。
彼女の白いワンピースには大小様々な淡い青の水玉模様がついていて、まるでシャボン玉のようだった。
彼女は大切な思い出をすぐに忘れてしまう。
覚えておこうとするほどに、大切な記憶は爆ぜてしまう。
失くした記憶にも、記憶を失くした事実にも彼女は気づけない。
彼女の記憶はきっとシャボン玉なのだ。
氷点を超えるとシャボン玉は凍るらしい。
ただ、大きなものほど凍る際に飛び散って壊れてしまう。
彼女はシャボン玉のように、大切なことばかりを失ってしまう。
小さな思い出だけを残して、一番を失くしてしまう。
だから私は、今日も彼女に忘れられる努力をする。
これからもずっと、私だけは彼女の記憶に残れない。
氷点の記憶 春風月葉 @HarukazeTsukiha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます