雨の季節にぴったりの、しっとりとした物語。取り返しのつかない切なさに胸が締め付けられます。
主人公の〈俺〉は高校生。ある雨の日、学校の玄関で傘をなくして困っていた同級生に声をかけた。名前も知らない、それまで話をしたこともない同性に、傘を半分貸して駅へと送った――それだけのこと。その日、彼は死んでしまった。……名前も知らなかった相手だけど。向こうはそうではなかったかもしれない。何か言いたいことがあったらしい、伝えたい想いが。それは、何……?共有した時間はわずかではあったけれど、それだけに印象は鮮烈で。主人公とともに、真実を問いたくなりました。相変わらず、みごとな心理描写です。
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