第3話 某着物屋で働く①
今働いている着物屋に入社前、別な着物屋で働いたことがあります。
たった数日でしたが、私の人生の中で3番目くらいのつらい経験でした。
着物も着れない、着物の知識も皆無なのに後先何も考えずにやってしまって
痛い目に合う自分の愚かさ、至らなさを思い知った出来事でした。
その某着物屋(個人商店ではない)にはネットの求人広告で応募して面接即採用。
翌日からバイトで入りました。
そんな簡単に採用されるほど世の中、そう甘くないということを、このときの私は
考えもしなかったのです。なんてバカなんだ、私。
初日、まず驚いたのが販売員のオバサマ方に明らかな階級があることでした。
おそらく売上による序列ですね。
朝礼でも上位席と下位席に明らかな差があって、今考えたら笑えます。
(上位席はフカフカシートで下々の席は中古椅子)
入社したての私はどこに座って良いか分からず恐れ多くも上位席に座ろうとして(笑)下位席よりさらに下の末端席に店長の顎指示で座らされました。
そりゃ、まー何もできないから仕方ないとはいえ、初日で職場環境も良く分かってない新人に顎でそこじゃないと指示する店長って。
お客としてこの店を選ぶことはないなと、そのとき既に思ってました。
次に驚いたのが、お客様が来ない。
商店街のけっこう良い場所にある路面店なのに、営業時間内に来る人、ほとんどいませんでした。
たまに路面に出している小物をチラ見していく人はいましたが、店の中に入ってくる人はホントに数えるほどでした。
なんでこれでやっていけるのだろうか、大丈夫なのかーこの店!と、当時は不安に
思ったのですが、採算取れない店を営業させるわけありません。
おそらく毎月、売上を上げるための催事が定期的に組み込まれていたはずで、たまたま私がいたときにそれがなかっただけでしょう。
さらに着物の着方を教えてもらうも何が何だかチンプンカンプン。教える方も時間の無駄と思ったのか、1回で終了。
人に着せる着装も、まー不器用なのか要領悪すぎで全然覚えられませんでした。
あとできることといったら、店内のガラスケースを掃除するふりをしながらお客様が来たら素早く言って声掛けをすることくらい。
でも肝心のお客様が来ない。
やっと来たーと思ったら、寝巻用浴衣を探すお客様でした。
普段着る浴衣は寝巻用にならないのは素人の私でもわかります。
店に置いてあるのは一般的な浴衣のみ。
お目当ての商品が店に無い場合、申し訳ございませんが扱っておりませんと謝罪、
またはお取り寄せしますかと確認するのが、ごく一般的な対応でしょう。
でも当時の私は何を思ったのか、寝巻用浴衣なら病院の売店で良く売ってますよと、お伝えしてしまったのでした。
(せめてネットで購入できますと伝えておけばよかったのに)
お客様が帰った後、即行怒られました。店長の次に偉いらしい女性社員に。
病院とかマイナスなことをお客様に伝えるなんて非常識、ということを言われましたね。確かにその通りです。申し訳ございません。
接客業では余計な一言が後々大きなクレームに発展することがあるというのに。
なんてことを言ったんだ私。
ただし、そのときの社員は不用意な一言でクレームになったり、店のイメージを傷つけるかもしれないといった接客NGや大事なこと、忘れてはいけないことを具体的に説明したのではなかったですね。
そのときの私に欠けていたお客様への気遣いのなさを指摘しているのとも違ってました。
どうやらスタッフとして育てる気がなかったのだと今にして思うのでした。
袖から火事 しらんぷり @kinomayoi
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