第2話 着物を着る

 今の仕事に就くまで、自分で着物を着れなかった私。


 とはいえ、着物が着れないと話にならないという状況になり、ちょっと練習する

だけで、無事着られるようになりました……なんて、そう簡単に行く訳がなかった

です。


 着物って、ほんとに日本人みんな着ていたのかよーーーとぼやきたくなるほどメンドクサイです。

 まず着るのに手順を覚えなくてはいけない。

 最低でも紐が無いと着れない。

 背後で結んでいる帯のどの辺がどうなっているのか皆目不明。

 衿の抜きとか、おはしょりの巾とか、帯の大きさや垂れの長さとか、常にアバウトながらもバランスが大事。

 背中に手が回るくらいの柔軟さも必要。

 その他いろいろ。


 その昔、実家の母がいとも簡単に着物を着るのを見ていて着物なんて着ようと思えば誰でも簡単に着れるもんだと侮っていました。

実際は着れはしてもそのまま外を歩けないです。

(衿元がひん曲がっている。着物が落ちそう。お太鼓が落ちそう。帯がユルユルなのが丸わかり。裾ふんづけそう。えもんが抜き過ぎか、抜けなさ過ぎの両極端。)


 くそーーーーと思いながら2年くらい経った頃。……悟りました。


 着物は練習するものじゃないんだと。


 着物は着る物なので、フツーに毎日着ていれば車の運転のように手足が覚えてしまいメンドクサイとか考えずに着れるようになる。

 このことに気付いたとき、私は着物を着れる人になってました。

(外に着て行っても帯も落ちず着物もはだけず、30分もあれば支度ができ

丸一日着ていてもほとんど着崩れてないレベル)


 もちろん、着るためのコツを教えてもらうのはとても大事だし、見た目もグンと

良くなります。


ただし締め付ける紐が嫌なのとグータラな私は着付便利グッズ愛用派です。


 着付にそんな手抜きグッズを使うなんて邪道よ!とお怒りの先生もいましたが、着物しか着てない時代に楽に着れるためのウエストベルトとシャーリングの伊達締めがあったら、絶対に使ってましたよ、私。

着物を紐だけで美しく楽に着ることは可能とはいえ、そのための便利な道具があるのだから必要な人は遠慮なく使ってください。

 締めすぎて苦しくなったり、緩すぎて落ちてくる心配しながら着て、もう二度と着物なんて着たくないと思われるよりは、道具使って楽ちんで着ていただく方が着物屋にとってありがたい選択だと思います。


 道具が無いと着れないとかダメでしょうなどと言わず、着る物なんですから

好きに着させてー。

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