第7話

7話 夢か悪夢か


【俺は 夢を見ていた。

とても 心地のよい夢だ。この瞬間 が唯一、俺が生きてるって事を。。。】


【実感出来る瞬間だった…。】


「ヒィィィィーッ!た、た、助けてくれ!な?何でもするから。

お金ならいくらでも払う。お前は雇い主からはいくらもらってるんだ?何なら2倍払う!」


男は怯えた表情で命乞いをしてい

る。

恐怖で腰でも抜かしたのか、床に座り込んで立つ事が出来ないでいる。


男の周りには首がない20人程の死体が床に転がっており、一面血の海になっている。


俺の服は返り血で紅く染まっている。

両手には日本刀らしき反りのある物が握られており、先端からは“ポタ、ポタ”と血が床に滴り落ちている。


また、血の独特な鉄錆の臭いが部屋中に充満している。

俺は深呼吸をしてその匂いを思いっきり嗅ぐ。。


匂いを嗅いで、俺は恍惚(こうこつ)な表情になる。


そして呟く。


「ああ。血のいい匂いだ。心地がいい。。。」


そう言うと、命乞いをしている男に上気した声で喋り掛ける。


「お前らの傭兵はこんだけ?

まだ居るんやったら、今すぐ呼べば?

それまで命は待っててやるから。」


「でも早くしないと殺すからね?」


それを聞いた男は、部屋の端に怯えて蹲っている女に怒鳴りつける。


「早く呼んでこい!西館に俺の兵隊を待機させてたろ!?行け!!早く連れてこねえとぶっ殺すぞ!!」


そう言うと女は急いで部屋を出る。


その後、画面がブラックアウトする。


「ーーーーーーー。」




「う、う、はぁ。はぁ。。ああ!」


「夢か…。」


ベッドから勢いよく起き上がる。全身はべっとりと汗で濡れている。


そうか。あれから気づかないうちに寝てしまったようだな。。


俺は、退院して自宅のアパートに帰ったあと、疲れていたのかどうしようもないくらい眠くなった。


色々しないといけない事はあったが、睡魔には勝てず。何もせずベッドに横になったんだったな。。


それから夢を見たんだろう。。

また同じ夢だ。いつもあの場面で終わってしまう。あの先は?と考えたが見ることはない。。。


あの夢は物心ついた時から見始めている。

始めはぼやけていたが、だんだんリアルで現実と遜色ない感じの夢になっていった。

最近では夢の俺が本当の俺なのではないか?と思ってしまうほどだ。


夢はいつもうなされて起きるのだが、何故か夢を見ている時は心地が良く、楽しんでいるのだ。。

しかも登場する俺は過去の自分で、こういう人殺しをしてきたんじゃないかと思えてくる。。


そんな夢を見ているという事は、“人殺しがしたい”と心の中で思っているんじゃないか?と考えるようになっていった。


「そんなんじゃない!」


何度も思い、考えた。

普通の企業に就職しても何か心は満たされず。これじゃ無いと思った。


「やっぱり。人を助ける仕事がしたい!助けたい!」


その思いが強くなり、そしてその夢、いや目標を叶えるために看護師になると決意し勉強に打ち込んだ。。


看護師の仕事をして、人を助ける事に喜びを感じてきた頃。。


この前の事故があった。。


車が近づいてきて、死が近づいているというのに恐怖を一切感じ無かった。。

あの時は脱水症状か?と思ったが、違う。。


俺には死の恐怖が無いんだ。。。


でも。。。


あの時、生きていて良かった。と心の底から思ったのは確かだ。それで生きてる実感を感じたのかもしれない。


今までは身体を虐める(筋トレ)で痛みを感じる事でしか生きてる実感が得られなかった。。


多分、生きててよかっと思ったのは、また看護師として働ける事が嬉しかったのかもな。。


ただ、あの女性の不思議な声。


《蘇った命》


あの時、俺が生きてる実感や死の恐怖を感じ無かった理由が分かってしまった。


「俺は殺人鬼だったんだ。。。」



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不死身のナースマン 闇夜のウーパー @yamiyonou-pa-

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