第10話 転生したら……

 暗い。そしてひんやりしている。身動きもろくに取れない。

 ここは何処だ? 俺はとうとうあの世に行くことができたのだろうか。


 これまで何度も願ったけれども叶わなかった。

 少し振り返ってみようという余裕すらある。スマホだろ? 納豆になってからのアイロン。ネコ草のときに落下して扇風機。あれは顔がグルグルしてしんどかった。そしてゴボウで地中に埋まってからのトイレットペーパー。卵になって下敷きのときはガキに割られたっけ。


 やべぇ、法則があるようでない。無機物有機物の繰り返しかとも思ったけれどもトイレットペーパは無機物じゃない。

 徐々にどこかに近づいているという雰囲気もなく、いたずらに転々としているだけだ。


 待てよ。すぐに転生していたはずなのに、今回はやたら空白期間がある。

 これは期待せざるを得ない。


「いろいろなモノの大切さが身に染みたかね?」


 突如声がした。

 なるほど、たしかに人間だった頃の俺はモノを粗末に扱っていた気がする。その報いなのか──多くの体験をして深く反省をしたあたりで意識が薄れていく。


「そろそろ許してあげるかのぉ」

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転生人生 山羊のシモン(旧fnro) @fnro

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