第9話 転生したら○○○きだった件

 振動が心地いい。まるで列車に揺られているかのようだ──


 そんな感傷に浸る余裕すら出てきた。

 今度はなにになったんだ? そして何故暗いのか。

 周囲が騒がしい。どうやらお子様たちがふざけあっているようだ。


 にわかに揺れが強くなったりする。

 子供の鞄にでも入っているんだろうか。もしかしてランドセル?


 懐かしいチャイムが鳴り響く。

 ここは学校か。ご主人様の声から察するに小学校。


 机の上にぶちまけられる俺たち。

 子供の持ち物はいくつかある。そのうちのどれなのか未だにわからないが、教科書だったら1年くらいはちそうだ。


 無造作に放り込まれてからのホームルーム。

 といっても低学年だからだろうか、少々やかましい。

 学級崩壊なんて言葉もあったよなぁ──

 そしてキラキラネームを名付けられた生徒たちもたくさんいそうだ。昭和の人間からすると、少しギョッとしてしまうところはある。時代の流れなのだろうか。もしかしたら十年後には当たり前になっているのかもしれない。

 ただおっさんからすると、せめて当て字でもいいから読めるものにしてくれと思ってしまう。


 放課──愛知県の方言だが、授業と授業の合間の休み時間のことだ。

 俺は机から引っ張り出された。

 そう、授業のときに判明したが、俺は下敷きに転生していたのだ。


 休み時間に手に持たれるということは、たぶん──

 案の定ご主人様のふさふさな髪の毛を舐めさせられる。しかも高速で。なんという屈辱。


「ほらほらー、せいでんきー!」


 知ってる。多くの人が通った道だ。

 ただ、下敷きというのは案外丈夫に作られている。ちょっとやそっとじゃ壊れたりはしない。


 不意に強制的な背筋をさせられた。

 ベコベコベコベコという独特の音が身体から発している。


 いやな予感がする。いくら丈夫とはいえ、ここまで激しいと──


 激痛が走った。

 真っ二つに折れてしまったのだ。


 遠退く意識の中で無邪気な声だけが頭に響いた。


「あーあ、割れちゃったー」

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