第3話

ゴゴゴッと耳に届いた後、地面の円盤が回った。重い石のフタを押す音。縦にそして横にも動く、地震だ。飛び起きた私は、外を見た。雲は晴れるどころかより深くなり朝か昼かすら分からないくらいまで濁っていた。ベットから降りようとするといつもより動きが遅い。昨日の帰り道、私の足を掴んだ何かはまだそこにいた。洞窟は地震の影響を外より遥かに受ける。急いで洞窟へ行こう。その日、私は深呼吸をし忘れた。


「おはよう!」

テーブルが倒れた形跡がある。ツルハシが少し汚く並んでいたが、見慣れた光景だった。全員が汗を流していた。

「おはよう!ちょっと怖かったね」

少し話を聞いて、下の階段へ向かった。

「おはようございます」

ツルハシをデタラメに使ってる人がいる。正しい方向に掘れていない。テーブルを直そうとしているところだったが、いつもの向きと違う事に気がついた。

「遅い!あっちでアレ直してきて!」

と、椅子に座る少し賢い人に仕事を貰った。そういう事か。私は交われない2つの螺旋の気持ちをここで見つけた。「おはよう!」と挨拶をした所は、もう他の事をしていた。でも、ここは一日中、復旧作業で終わるだろう。そう感じた私は、テーブルを向きが違うまま置こうとしている人達の横をそっと通りすぎた。通りすぎた時、いつも普通に仕事をする何人かの顔に曇り空が見えた。分かった私は、あっちでアレを直す作業を1人で時間をかけてした。


お昼ご飯だ。ここでは、特に話題もないのにみんなでご飯を食べる。同じご飯を外でも食べた事があるのに、美味しいと感じない。そんな事を考えていると何人かがテーブルに気がついた。正確には気づかないフリした人が気づいたフリをした。ご飯を残し、今度はみんなでテーブルの向きを変える。ご飯を残す事が嫌いな人が怒っていた。


作業は一日をかけても終わらなかった。顔色が悪く、体調が悪い人が増えてきた。何人かは大量に汗を流していたが、8割くらいの人が疲れたフリをしていた。お昼ご飯の事で怒っていた人が、少し偉い人に歯を向けた。

「ご飯を残したく無いので、明日は全員で早くから作業をしたいです。」

見当違いも正しい発言に。考えも違った間違った主張に何とも言えない胸の痛みを感じた。

「そうだな。明日は早く集まろう」

その言葉に雲が集まった。


神様は2匹の「土竜」を叩いた


私は疲れた帰り道の途中に深呼吸をし忘れた事に気がついた。外に出れた。空には断層雲が。地震雲だ。朝、少しだけ回ってみせただけの石の円盤がまたゴゴゴッと音をたてた気がした。

明日はどこまで円盤が回るのかな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モグラ叩き @kemusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ