第5話 真実
ん……なんか臭いな……。これは……鉄みたいな匂い?
ていうか俺ななしてたんだっけ……。確か変な運転手に倉庫に連れていかれて……。
そして……
「やばい! 怪物が!!」
目を開けるとそこは一面が真っ赤に染まっていた。
意識が途切れる前と何ら変わらずに立っているのに、景色だけが一変しており見渡す限り赤一色に染まっている。倉庫内にはむせかえるような血の匂いが充満しており正直かなりきつい。
「い、一体……なにが起こったんだ?」
『なにお主がやったのじゃよ。まぁ覚えとらんのは仕方がないのぅ』
突然どこからかノトスの声が聞こえ始める。
「どこから話してるんだ?」
『ん? 我々は今同一の存在になっているからのぅ。お主の考えておることはわしにもわかるし、わしの考えておることはお主にも伝わる。それよりも自身を見てみぃ』
言われた通り自分の身体を見てみると全身のいたるところに鉱物のようなものが付いている。さらに手には同じような鉱物でできた刀が握られている。
「これは……どうなってるんだ?」
『わしとエンゲージしたからじゃよ。この鉱物はオリハルコンでできておる。この世界にはないだろうけどのぅ。なんだお気に召さないのか?』
「いやなんか……いいな、この姿……」
『それはそうじゃろう。なにせわしが考えた姿だからな!! おっと…………色々説明したいところだがもう時間切れのようじゃ』
倉庫の外からサイレンが聞こえてきてパトカーや白いバンが所狭しと倉庫の外に止まり始める。
「な、なぁ……この格好のままでいいのか?」
『うむ。では元の自分の姿イメージしろ。そうすれば戻れはずじゃ』
「自分をイメージ……」
言われた通りイメージするとあら不思議、先ほどまでの格好が嘘のように元の格好に戻る。そして右手に温かい感触を感じ、見てみると手をつないだノトスが満面の笑みで俺を見ている。
すると白いバンから白衣を着た人たちと銃を携帯した明らかにヤバい感じのする人たちが倉庫内に入ってくる。
「おい、そこのお前! 今すぐ床に伏せろ!」
銃をこちらに向け野太い声で怒鳴ってくるマスクの男たち。
言われるがまますぐさま床に伏せる俺。
「おい……ノトス。お前も早く床に伏せた方がいいぞ……。あいつら銃を持ってるから……」
「ああ、お主は知らないのか……」
「待つんだ!! 今すぐ銃を下ろせ!!」
突然聞きなれた声が倉庫内に響き渡り銃を持った男たちは。
この声は……
「
白衣の人たちの中にいたのはさっきまで一緒にいた
「ノトス……それに……
多分今まで俺たちに気を取られて気づかなかったのだろう。倉庫内の血に気付き一瞬驚いた顔をするがすぐに俺たちの方に向き直り近寄ってくる。
「燈! 大丈夫か?」
「おいおい、わしは心配してくれないのか?」
「ノトスは心配いらないだろう。どうせ君がこれをやったんだろうしね。しかし……これはいささか度が過ぎてるようにも見えるがな」
やはり靄さんとノトスはかなり前から知り合いなのだろう。
やり取りだけでなく雰囲気でなんとなくわかるほどの信頼関係がうかがえる。
「それで……この血は一体どういうことだ? 何があったんだ?」
「これはわし……というかわしたちでやったんだよ。わしと燈とでな」
「それは…………まさかこの前話していたエンゲージというやつか?」
「そうじゃ。奴を倒すには燈とエンゲージするしかなかった。靄には何と言ってよいか……。とりあえず、すまない」
「そうか……」
どこか後ろめたさのある顔で俺を見てくる靄さん。多分前から異なる世界の存在つまり俺の過去についてもノトスに聞いて知っていたのだろう。
別にそのことについてなんとも思わないと言えば嘘になるが教えてくれなかったのには何か事情があるのだとわかっている。しかし……
「…………」
俺は何も言うことができなかった。気にしてないと、だからそんな顔しないでほしいと言いたいのに喉からその言葉を発することができなかった。
「燈……その……」
「まぁなんじゃ……。色々話したいことも聞きたいことも多かろう。とりあえずシントチョウに戻ってからにしよう」
何か言いかけるが俺と同様言葉が出てこない靄さんをかばうようにノトスが提案をする。
靄さん達が乗ってきた白いバンに乗り、新都庁に向かいながら沈黙が流れる車内で俺は自分の過去に向き合う覚悟を決める。
滅びゆく世界と救済の勇者 @falldoubt
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。滅びゆく世界と救済の勇者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます