第9話 はじまり

 先にベンチに座って待っていると、後から彼女が「おまたせ!」と言って来て、僕の隣に座った。彼女は音楽を聞いていたのだろうか、イヤホンを耳から外し音楽プレイヤーと共に鞄の中にしまった。「音楽を聴いていたの?」「まあね」と彼女は言った。「どんな音楽聞いたりするの?」「いろいろ聞くけど、バンド音楽とかかな」自分もバンド音楽をよく聞くので少しうれしい気持ちになった。「バンド音楽ね。自分もけっこうバンドサウンドというかあの感じ好きだな」高校生の頃だろうか少しギターをかじったことがある。そのなつかしさを思い出す。「町中にストリートでやっているギターリストが鳴らすアンプから聞こえてくるあの暖かい音色がとっても好き。こころがふわっと軽くなる。何か懐かしいそして切なくなる」彼女は少し考えてギターを弾く真似ををして言う。「ギターのコード弾きっていうんだっけ?あの音好きだな、ハーモニーがとれているのが良い感じ、その感じが暖かいよね。」「そうだね」と僕は答えた。コード弾きっていう用語を知っていることに少しだけ驚いたが、それだけ音楽が好きなんだなということもなんとなく感じ取れた。


「音楽を聞くとき、選ぶときって何を重視したりする?」と僕は彼女に聞く。「うーん、結構、歌詞を重視しているかな」「僕も歌詞を重視するかな、言葉を大切にしているアーティストが良いかな。」「そうそう言葉って大切だよね、悲しい音楽でも明るい音楽でも寄り添ってくれるような言葉。居場所となってくれるよね、音楽って」「音楽から始まって言葉そして居場所、何かつながっているそうな気がする。このことについて話してみたいな」「哲学っぽくていいね。前にも君が話していたような居場所、仕事についても絡めて話してみたらもっと面白くなるかも」とわくわくした顔をして彼女は僕の顔を見た。「じゃあ適当に思いつくままに考えて話していこうか。」「うん」と彼女は言った。彼女は僕が話し始めるのを待っているようだった。

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僕と彼女 ふぅー @nino2

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