第8話 俺たちの戦いはこれからだ


 幼女サキュバス、パロディアは俺にスーツ化されて中に入られてもまだ抵抗を続ける。

 なんて力だ。

「(キサマが果てるのが先か、勝負じゃ!)」

 パロディアが体に力を込めるたびに、手、腕、肩と次々に支配を奪われていく。

「(なんじゃ、着ただけか?次の手が無いなら、このまま私の一部として取り込んでやろう)」

 だが、俺にはまだ残された力がある。

「ミクさん。"残り容量"は?」

 俺はなんとか口を動かして訊ねる。

「(……あ、はい! そのパロディアの体のサイズは0.55なので、ちょうど同じ0.55が残っています!)」

「じゃあ、いけるな」

 俺がニヤリと口元を動かすと、パロディアの抵抗が強まった。

「くっくっく。無駄なあがきを」

「そいつは試してみないと分からないぜ。包み込め! 俺のラバースーツ!」

 ごぽっ

 パロディアの背中の割れ目があったところから、黒い水のようなうねりがあふれてこぼれた。

 それは素早く体の表面を伝い、全身を覆い尽くした。

 ピッタリと、一部の隙間もなく。

 口も、鼻も、目も。体中の穴という穴さえも完全にふさいでパロディアの体を密閉した。

「ングーーーッ!?」

 息ができない。俺も苦しいがパロディアも同じ苦しみを味わっているだろう。

 だが、窒息プレイや呼吸制御プレイになれた俺にとっては焦るほどのものではない。

 全身を包まれるのがこれが初めての経験のパロディアにとっては、恐怖と混乱でたまらないだろう。

 パロディアと一体化した俺にはパロディアの焦りさえも伝わってくる。

「(バカな、こんな、こんなのってぇーーー)」

 ビクン!

 パロディアの体が大きく跳ねる。

「(キモチ……イイ……)」

 ばたり。ビクビク。

 パロディアは全身に屈辱を感じながら興奮で果てた。


「拘束解除。……はあ、危ない所だった」

 俺は完全にパロディアの体の支配権を掌握した。

 勝った。

 それを確信するとともに、頭の中にあのレベルアップのファンファーレが何度も鳴り響いた。

 ジャジャーン! ジャジャーン! ジャジャーン……

「(……すごいです、イツキさん! 一気に連続15回もレベルアップしましたよ!)」

 ミクさんも興奮気味に伝えてくる。

 幹部クラスの敵を倒したからその分の経験値もたくさん入ってきたのか。

 低レベルだった俺にとっては何レベル分もアップするだけのものだったらしい。

「(……+0.1 +0.5 +0.1、すごい、現在のレベルは17で、ラバースーツの容量も3.0になりました! おめでとうございます!)」

 ようやくファンファーレが鳴りやんだと思ったら、一気に3人分のスーツ容量まで獲得していたらしい。

 俺はパロディアの体から這い出る。

 頭領の敗北を悟ったサキュバスたちはさっさと散り散りに逃げて行ってしまった。

 すると、様子を見守っていた村の女たちがわぁっと駆け寄ってきた。オヤカタもどさくさに紛れてまだ全裸の俺を抱きしめる。

 村の男たちはサキュバスとのプレイを中断させられて若干不満そうだった。

 ともあれ。

 俺としてはパロディアを打ち倒しただけだったが、結果的にこの村も魔王四天王のひとりの襲撃から救ったことになった。


「さあさあ、勇者サマ! たーンと食べておくれよ」

「悪かったな、兄ちゃん。その黒い姿が見慣れないもんで恐がっちまって」

「あー、あはは」

 俺は村中をあげての大宴会で盛大に祭り上げられた。

 パロディアを倒した後に元の全身黒ラバースーツとガスマスク姿に戻ったのだが、村人の歓待ムードはあたたかいものだった。

 ちなみにパロディアはキープ化せずにとりあえずスーツ化も解いて拘束中。

 ラバースーツの容量2.0分を使って分厚いベルトとコルセットを作って縛り上げてある。

 パロディアは口を塞がれているため目で抗議しているのだが、何やら目にハートマークが浮かんでいるような。

「なんだパロディア。人格消去されないだけマシだろ? 何か文句があるなら言ってみろ」

 エビぞりのまま拘束されて天井から吊り下げられているパロディアの口枷を外してやると、よだれをだらだらとたらしながら熱気のこもった息を吐き掛けられた。

「はあぁあぁ、ごしゅじんさま……」

「うん、なんだって?」

「私はもう魔王四天王辞めますぅ……ご主人サマの忠実なしもべ、生オ○ホ、ペ○スケースになりますからぁ」

「ヤバい単語を口にするな!」

「ご奉仕っ、ごほうしさせてくだひゃい……」

「イヤお前それ吸精する気だろ。ごほうびになっちまうよ」

「何でもしますからぁ」

 パロディアはプライドを捨てる事にさえも快楽を見出しているかのように従順な態度を見せる。

「そうか、じゃあ魔王ってヤツについて教えてくれ」

「えっ、ええ、それはぁ、ダメですぅ」

 もじもじ。

「何でもするんだろ?」

「んふ、ご主人サマが私を勝手にして勝手に私の頭の中を犯すように強引に記憶を覗きたいというならぁ、止めませんけどぉ」

 もじもじもじもじ。

 何だコイツ、誘ってやがるのか。

「じゃあお言葉に甘えて」

 俺はパロディアを拘束したままスーツ化する。手繰り寄せて強引に背中の穴から頭だけ突っ込む。

「えっ、いきなり!? 待ってまだ心の準備が、アァーーーッ!」


 ビクンビクン

「はふ、しゅごかったぁ……」

 パロディアの頭の中から必要な情報だけ盗み見て脱ぎ捨てる。床に捨てたパロディアは勝手に気持ち良くなっているようだから今は放っておこう。

 こいつの頭にあった情報によると、魔王というのが

 『烏羽玉』ロフォフォラ・ウィリアムシイ。

 そしてその配下の四天王として

 『黒王丸』コピアポア・シネレア

 『金烏帽子』オプンティア・ミクロダシス

 『弁慶柱』カーネギア・ギガンティア

 と俺が倒したサキュバスの

 『銀粧玉』パロディア・ニヴォサ

 がいるらしい。


 はたして魔王を倒すことがこの旅の目的という事でいいのだろうか。

 とりあえずは片っ端から倒していけばいいだろう。

 という事で俺は村人からの手厚い歓待を受けた翌日、すっかり従順になったパロディアを連れて魔王討伐の旅に出るのだった。



 ~これが、後に『覇王イツキ』と呼ばれる冒険者の物語の始まりである。~



   了

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全身ラバースーツ転生 雪下淡花 @u3game

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