4. お客さん、お迎えですよ。
ああ、雨も止んできやしたかね。お客さん、あんたそろそろ帰らないと。
ん?なんでって?いやそりゃあ……。
そんな事より話のオチ?ああ…すいやせん。なんせもう大して面白くは無いもんで。
そのあと気がついたら病院の真っ白なベッドの上にいた学ランくんは、お医者さまに奇跡的に一命を取り留めたと聞かされました。
ああ、リアルな夢を見た。と学ランくんは思ったんですけどね、やっぱり思う所が有ったみたいで、そこから先は、いじめとか虐待を受けてる子どもたちを助ける職に就いて、真っ当な人生を歩みました。
ついでに、件のいじめは学ランくんがヤケになって出した告発文が世間さまの話題になって、学校側は責任を取っていじめの調査。学ランくんは平凡で満ち足りた高校生活を送れたんですね。
この話はこれでお終い。ね、何の変哲もない、面白みのないオチでしょ?
だからお客さん、早く帰った方がいい。何でって……。参ったな、ホントに覚えてないんですかい?ほら、自分がどこの誰か、どこから来たか。考えて下さいよ………。
「おう店主、邪魔するぜェ」
ああ、ほら、ノロノロしてるから。雅さんが来ちまった。
お迎えですよ、お客さん。
訳が分からないって?お盆で生前の家に帰ったんでしょ、お客さんは。大方、家族の顔を見たら現世への執着が高まって、現実がゴチャゴチャになっちまったって所ですかい?
そんなはずない?この店に入るまでは普通の生活をしていたって?だから、ゴチャゴチャになってるんですってば。
「お前は『歩きすまほ』だかなんかで事故って死んだんだ。自業自得も極まれりだよなァ。ま、死んだ理由なんて大した問題でもねェ、さァ帰るぞ、狂都へ」
そこは『半端者』の街。極悪人とは言えないけど、天国も転生もお客さんの様な人達には勿体無い、そういう街でしょ?狂都は。
「ああそうだ。閻魔さんのお手を煩わせる程でもねェ。死ぬことも叶わずに、俺たち一緒に、いつまでもいつまでもいつまでもずーーっと同じ時を過ごすんだ。いつ狂ってもおかしくないぜ。…………最高だろォ?」
ああ、いつ見ても素敵な笑顔ですねぇ。泉下のダンナ。虜になっちまいそうな夜色の目ん玉だ。そう思いません?お客さん。
――ああ、もう聞こえませんねぇ。
それじゃ、お二人とも。足元には気をつけて。
おやすみなさい。
そうだ、狂都へ行こう。 おうごんとう @gorogoro-tou
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