第13話 別に悪いことじゃない

「ケイちゃん、おはよう」


 家から出てきたアキは、門のとなりで待っていたケイコの姿を認めて手をふった。


「おはよう、アキ」


 昨日で夏休みが終わり、学校が始まった。朝の風景にランドセルを背負った子供たちの姿が戻ってきて、道々にしゃべりながら、みんな丘の下の学校にむかって歩いている。

 九月になっても夏の暑さはまだひきずっていて、セミも鳴きやんでいなかったけれど、朝の風はすでに涼しく気持ちのいいものになっていて、ケイコはアキと気分よく通学路を歩いた。


「今日、席替えだね」


 学校へ下りる坂のまえでアキが言った。


「アキの近くになれたらいいな」


 ケイコがそう答えると、アキは「私も」とうなずいた。


「でも、また山本くんのとなりになったらやだな」


 ちょっと目をふせて、アキがぼやくように言う。

 ケイコはとなりの席が山本になったらどうしようかと考えて、それも別に悪いことじゃないよなと思った。

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ケイコの夏 ラーさん @rasan02783643

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