54.「私が笑ったら死にますから」と水品さんは言ったんだ。 感想


 第7回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作です。


 Twitterでの評判が良かったのと、表紙イラストの女の子が可愛かったので買ってみました。


 ですがこのエッセイはラノベ紹介エッセイなので、正直、ポプラ社ってラノベレーベルなんだろうかと紹介するのを戸惑ったんです。


 ポプラ社といえば、『かいけつゾロリ』シリーズとか『ズッコケ三兄弟』シリーズみたいな児童小説で有名です。


 私の中のポプラ社もこのイメージ。


 ですが、今回この『水品さん』を刊行した「ポプラ文庫ピュアフル」について調べてみると、「2005年にスタートした、児童文学とライトノベル、一般文芸の中間的なポジションのレーベル」という風に書かれていました。


 というわけで一応ラノベレーベルではあるのかなと思い紹介することに。


 なんとなくですが、児童文学を卒業した中・高生向けのライト文芸色の強いライトノベルなのかなと思ったり?


 前回紹介の『この恋と、その未来』とか、ライト文芸的なラノベも結構ありますしね。


 ライト文芸、ライトノベル、児童文学の境目もなかなか曖昧でジャンル分けは難しいのかも知れません。




◆タイトル『「私が笑ったら死にますから」と水品さんは言ったんだ。』

◆作者 隙名こと

◆イラスト 爽々

◆レーベル ポプラ文庫ピュアフル

◆発売日 2018/09/05


◆感想


 クラスでも目立たず友達のいない男子高校生・駒田に、となりの席のクールな美少女、水品さんが、ひそかに声をかけてきた。


「15分で1万円のバイトに興味はありませんか?」


 水品さんが決して笑わない理由と、怪しい仕事の真の目的は?


 傷ついた過去やトラウマを持つ二人が出会い、ある仕事を経て次第に立ち直っていく、ミステリータッチの青春ストーリー。





 辛い過去を持ちクラスで孤立する主人公が、ミステリアスな美少女に声をかけられるというラノベの王道的な始まり方をするこの作品。


 しかし、そこで彼女の持ちかけてきた仕事というのが謎に包まれていて、読者の興味を上手く惹き付けます。


 「泣ける青春ミステリー」と帯にある通り、大きな謎が物語を引っ張る展開。


 ですがどちらかといえば推理小説のような大掛かりな謎解きやどんでん返しよりはちょっとづつ水品さんのことが明らかになるにつれて二人の距離が縮まっていく、二人の交流を描いた作品だと思いました。


 辛い過去や人の悪意が重要なテーマとなる作品ですが、トゲトゲしておらず、透明感があってサラッとした読み心地で、すごく読みやすかったと思います。


 私も毎日Twitterを見てるせいか、ネットを通して以前よりも人の嫌な部分や悪意、集団心理の怖さを感じることが増えました。


 まさに今この時代ならではの、現代を切り取った作品なのかも知れません。


 日常のちょっとした引っかかりやモヤモヤを掬いとることが上手い作家さんなのかな、と思いました。


 これからに期待です!!






◇『“文学少女”と死にたがりの道化』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886102157


◇『サクラダリセット』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886277026


◇『スカートの中のひみつ。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054885983170

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