53.この恋と、その未来。 感想

 今回紹介するのは『この恋と、その未来。』です。


 このお話は「2015年度このラノ」ベスト10にランクインし、「2016年度このラノ」でも20位以内にランクインするという評価の高い作品でした。


 しかし、売上があまり良くなかったようで、作者によってこの作品が五巻で打ち切られるということが明かされると、このことがTwitterやまとめサイトで大きな話題を呼びました。


 私もこの時に、この作品の名前を初めて知りました。


 その後、ネットでの反響が大きくなったことから、最終巻の六巻まで出ることが決まりましたがもし五巻で打ち切りになっていたら本当に物語が中途半端なところで終わっていたので、作者さんやファンはそれまでの間苦しかったでしょうね。


 ラノベの続刊が出るためには最初の一、二週間の売上があることが必要だということですが、中々大変ですね。


 六巻の最後では、作者の森崎先生は今度はゲームシナリオや漫画原作、ラノベではない小説の仕事をしたいと書いていましたが(もともと『デビルメイクライ』『鬼武者soul』等のシナリオライターだったそうです)個人的には、またラノベも書いてほしいですね。


◆タイトル『この恋と、その未来。』

◆作者 森崎ビンゴ

◆イラスト Nardack

◆レーベル ファミ通文庫

◆発売日 2014/07/11


◆感想


 超理不尽な三人の姉の下、不遇な家庭生活を過ごしてきた松永四郎。


 その地獄から逃れるため、新設された全寮制の高校へと入学を決めた彼は、期待を胸に単身広島へ。


 知らない土地、耳慣れない言葉、そして何よりもあの姉達との不条理な日々から離れた高揚感に浸る四郎だったが、ルームメイトとなった織田未来は、男の心を持つ女生だった。四郎と未来、二人の奇妙な共同生活が始まる――というお話。


「性同一性障害」というラノベとしては重いテーマを真正面から扱った作品です。


 初めは暗くて重い話なのかと思い読むのを躊躇していましたが、読み口は重くなく、むしろ普通のラブコメのようにサクサク読めました。


 心情描写がリアルで無理がなく、四郎や未来に素直に感情移入できるのも良い点。


 スラスラ読めて続きが気になるので、その日の内に全6巻全て買ってしまいました。



※ちなみにですが、私が今までここで紹介した作品の中で、一巻を読んですぐ全巻揃えたのは『イリヤの空、UFOの夏』と『桜色のレプリカ』『この恋と、その未来』の三つだけです。巻数が少ないというのもありますが……


 ラストまでダレず目の離せない展開に、思わず最後まで一気に読んでしまいました。


「イケメン」の未来と同室になった四郎。

希望通り未来を男として扱う四郎だったが、やはり現実問題として女の子ということは意識してしまう。


 だけど、自分が女として意識していることがバレたら一緒には居られなくなる。果たして「その先」はどうなるのか? 最後まで目が離せないお話です。



◆『三角の距離は限りないゼロ』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886084786


◆『文学少女と死にたがりの道化』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969256/episodes/1177354054886102157

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