第12話 僕たちのこれから
「私は本来の姿のままで、この薬屋を続けてダリンとパパを見守っていくことにしたわ」
そう、リタさんは言った。
「そっか、あたしはどうしようかなぁ。またウオヂの師範代でもしようかな」
姐さんが言う。
僕は、僕はどうしよう 。
「少年、あんたはどうするの?」
リタさんに尋ねられるも、即答できない。
「……僕は、子どもの頃から勉強も運動も中の中で特に目立つ事も無く過ごしてきました。そんな僕が誰にも負けなかったのが、と言ってもマルチーヌさんには負けましたが魔法だったんです」
「ああ、それで少年はマルチーヌの弟子になったのね」
「はい……凄い魔法力でした。弟子になって色々教わりたいと思いました。しかも、昔から魔法を使ってきたわけでは無く、格闘一筋だった人がここ二年で独学で身につけたものだと聞いて更にこの人に付いていこうと思いました」
「それじゃあダメなのかい?」
「だって、姐さんの魔法力は遺伝だったんですよね? 元々凄い秘術魔法を使う家系の人だったから凄い 魔法が使えたわけで……そんなの僕が今更何したって追いつけないですよ」
「魔法の力は遺伝なんかじゃないよ。そりゃあ多少は遺伝もある。けれどね、大きく影響するのは『努力』と『学び』と『思い』なのよ」
「『努力』と『学び』と『思い』?」
「そう。マルチーヌがその良い例よ。元の姿に戻りたいと、魔法なんてまったく知らなかったのに知ろうと努力した、そして知識を得ようと学んだ、何が何でも元に戻るんだという思いを持ち続けた。それこそが短期間でマルチーヌの魔法力がかなりのものになったという証拠じゃないの」
……確かに、そうかもしれない。
何やらリタさんは呪文を唱えた。
「うわぁ」
姐さんが、また幼女の姿になってしまった。
「何すんのよ!」
「 マルチーヌ、あんただってまだゴールしたわけじゃないのよ。自分の力で元に戻る方法や力を得ないと」
「少年、マルチーヌの弟子、続けなさいよ。あなたとは違うタイプだからこそ、きっと学べるものがあると思うわ」
「そして……」
リタさんは、幼女になった姐さんを抱きしめた。
「マルチーヌも、少年から学ぶ事がきっとたくさんあるはずよ。行ってらっしゃい、また旅に」
芸術家はね、作品に自分の感受性を乗せられないといけない。
けれど自分の本当の内面を隠したり、自分自身と向き合えもしない人は本当の芸術作品なんて作れない、らしいわよ。
それと似てるの。いろんな事を体感し感じ取った思いを隠したり見ない事にしていたら魔法の力を向上させる事も出来 ないのよ。
自分がダメなところや未熟なところを見ないようにしている時点で、自分を成長させる事を怠けてるわ。
けれど少年は、自分が未熟なのを分かってる、見ない事にしていない。だから大丈夫。
マルチーヌはウオヂをやってきたから、体を鍛えることこそが鍛錬であると思ってしまいがちよね。
でもだからこそ、体より心なのよ。
そんな言葉を言い、リタさんは僕たち二人を送り出した。
「姐さーん」
あ、ディンパさんだ。
「久しぶりの実家はどうだった?」
「いやぁ、姉さんたちに料理を教わってきました」
「おお! じゃあ今度の旅では自炊も出来るかもね」
僕たちは、リタさんに背中を押されたように再び、旅に出る事にした。
姐さんは秘術魔法を会得するために。
僕は姐さんに勝てるように。
カラダの街は、まだ桜では無く雪が舞っていたが僕の心は暖かかった。
つづく……予定
姐さん幼女 ピューレラ @natusiiko2
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