第2話 予定

 予定は事前に決めておく必要がある。

 それは時間の消費を最小限に抑えておく作業だ。

 だが、その作業に時間をかけるのもまた無駄になる。

 その為、授業という必要で無駄な時間を使い計画を立てる。

 毎日のルーティン以外に行わなければならない事を考える。

 休み時間は少しずつ本を読む。

 それは異世界を旅する事に繋がり、また自分の経験出来ないような事を追体験することにも繋がる。

 この時間は無駄ではなく、必要不可欠なものだ。

 休み時間の過ごし方は決まった。次は昼食の時間だ。

 昼食は家から持ってきたおにぎりを屋上で食べる。

 購買で食事を買う行為はリスクが高い。

 並び時間を消費しつつ、更に自分の好みのものが手に入らないかもしれない。

 リスクは最小限に抑える。

 と、考えている最中に数学の教師から声が飛んできた。

「古田、何をボーっとしている。この方程式を答えてみろ」

 僕はため息を吐き立ち上がる。

「理解する必要がありません」

 数学教師も頭に手を当て、ため息を吐く。

「全く……」

 僕は着席すると、ノートに今日の過ごし方を書き込んだ。

 大体のスケジュールが決まると、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。

「今日の授業はここまでだ。試験も近いからな。ちゃんと聞いておけよ」

 教師は僕を睨みつけながら言う。僕はその視線に気付いたが、何を反応する必

要もないと考え、視線をノートに落とした。

 休み時間になった。

 僕は鞄から本を取り出し開いた。

 すると、斜め後ろから覗き込む影が現れた。

「ふーん……、多紀ってそういう恋愛ものも読むんだ?」

「美琴か……」

「何よ、美琴か……、って」

 怒るような口調で笑いながら正面の椅子に腰かけた。

「何このノート?」

 先ほど書いていた今日の予定を記したノートを、美琴が読む。

「ああ、今日の予定だよ。今は本を読む時間だ」

「ふーん……、でもこの予定だと足りないんじゃない?」

「何が? 無駄のない合理的な予定だと思うけど」

 僕は本に落としていた視線を美琴に向けた。

「無駄かぁ……。でもこの予定だと、私との時間がないけど? それとも、私との時間は無駄って事?」

 美琴は僕の目を見て言う。

 美琴との時間か……。考えに入っていなかった。

「無駄ではない、けど、予定に入れるほど特別な事でもない」

「じゃあ……」

 僕のシャープペンシルを取り、ノートに書き込んでいく。

「はい!」

 書き込み終えたノートを手渡された。ノートに書かれた昼食の予定に、追記されていた。

『美琴と屋上で昼食をとる』

 ノートから美琴に視線を向けると、美琴は笑った。

 元々食事はとるつもりだった。

 それが『美琴と屋上で』というものになっただけだ。

 このくらいの予定変更は、想定の範囲内だ。

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時間男 芦屋奏多 @yukitotaiyonohi

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