Chapter-0:機獣黙示録



 その悲劇は、あの夏に始まった。


 西暦2018年


 平成最後の夏───その日俺達人類は、地球という惑星ほしの支配者が生物自分達だけではないと思い知らされた。



資料:No.001

DATE:A.D. 2018 8/12   アメリカ・ニューヨーク

UNF'S CODE NAME:アーマイラ



『信じられない光景です!機械の昆虫がニューヨークを襲っています───』



資料:No.002

DATE:A.D.2021 5/5   イギリス・ロンドン

UNF'S CODE NAME:スワンプマン



『イギリス・ロンドンからマンチェスターに於いて突如発生し大勢の被害者を出したこの存在を国連は【スワンプマン】と呼称。以前ニューヨークに出現した【アーマイラ】との関連性を調査し───』



資料:No.005

DATE:A.D.2023 8/15   中国・北京

UNF'S CODE NAME:ケイオスハウル



『中国政府が実施した【トケイ作戦】により【鷹鬼牙おうが】並びに【凍豹牙とうが】の撃退こそ成功したものの、その直後突如として出現した【ケイオスハウル】により北京は壊滅的被害に───』





─── あの日を境に突如として現れては、人類に牙を向けてきた、機械仕掛けの異形の獣 ───



資料:No.011

DATE:A.D.2027 12/17   オーストラリア・シドニー

UNF'S CODE NAME:アグレッサー





─── 自律稼働機械群【機獣無法者アーマーローグ】 ───




資料:No.016

DATE:A.D.2032 2/28   トルコ・イスタンブール

UNF'S CODE NAME:シルバーン



─── それは自然摂理から外れた人類への『天罰』か ───




資料:No.024

DATE:A.D.2036 9/14   北朝鮮・平壌

UNF'S CODE NAME:絶火



─── 獣の意思か、あるいは忘れ去られた神話を体現するかの様に、彼らは人類に対して牙を剥いた ───




資料:No.033

DATE:A.D.2045. 3/11   ウクライナ・キエフ

UNF'S CODE NAME:甲王牙



─── だが、それすらも生温いとばかりに……さらなる悪夢が人類へと襲い掛かった ───



資料:No.XXX

DATE:A.D.2054 11/3   アメリカ・ロサンゼルス

UNF'S CODE NAME:───



『───出現したアメリカ西海岸部はかなりの大打撃を被りました』




     【神牙】



─── 米軍による150発ものの熱核攻撃をもものともせず、生物も、【機獣無法者アーマーローグ】も構わず、手当たり次第に駆逐していく内に ───


─── 【神牙】によって人類は、瞬く間に生存圏を失っていった ───



─── そのバケモノに恐れを為したのは、 ───



A.D.2061 10/21

 ニューヨーク・国連本部


『地球人類の諸君に告ぐ』

 ニュース番組に映るなりそう切り出したのは、日本の弥生時代を思わせる白色の衣を纏った初老とおぼしき男性。名をサンダルフと名乗った。

『我々は【ピクシフ】───監視者にして予言者である』

 その後ろには同じ衣装を身に纏った老若男女が大勢控えていた。

『我々は君たちに運命を告げに来た』

 ただ彼等の同胞だけではない。彼等に帰属した地球人も中には居るのだ。

『滅びの刻は近い。今こそ献身の道を見出だすのみ───』

 そう説いた彼が聖印を切ったところで、映像は途切れた。




A.D.2063 7/21

 ロンドン・ウェストミンスター寺院



 その上空に飛来する、五隻の


『私達は【リリサルド】』


 そこから姿を現した一団の姿は、地球の人類からしてみれば異様だった。

 その一団は男女共に、全員が第二次成長期を迎えたか否かと思える程に幼さを残す容姿をしているのだから。


『私達の故郷、【リリサルディア連星系 第三惑星】は、忌まわしいブラックホールに飲み込まれ消失しました』


 そう言葉を投げ掛ける彼女───【リリサルド】と名乗った組織の族長リトロス・テツキもまた、華奢な少女の姿をしていた。


『私達は此処、太陽系第三惑星【地球】への移住を希望します。見返りは、目下地球人類の天敵【神牙】の討伐を約束しましょう───』


 そう宣言した彼女が敬礼すると、一同もまた同じ方向へと敬礼を捧げた。


─── 遠い宇宙の何処からか青い星を狙っていた者達さえ、【神牙ヤツ】に戦慄し恐怖した ───




『映像資料:地球連邦人類同盟軍 旧日本・富士山麓部基地 コードネーム:【摩訶鉢特摩】』


 いくつかのウインドウの一つに、その異形の機体が映り込んでいた。


『オペレーションブロックに原因不明の不具合が発生……人工知能ユニットが沈黙……!!?』

『サーバーダウン、駄目です───【メカハドマ】起動せずッ!!!』


『何で……ッ!!? どうして起動しないのッ!!?』


 無慈悲にも放たれたその報告に、リリサルドの女性士官の一人が金切り声に近い悲鳴を上げる。


『───熱線反応……施設外部装甲板に直撃ッ!!! 第三装甲まで溶解が始まっています!!!』

『もう持たない……脱出するぞッ!!!』

『───待ってください!』

 その士官は、今にも攻撃が迫る中でなおも食い下がった。

『今ここでを失えば、それこそ世界は終わってしまう!』

『───駄目です!!! 熱線、直撃します!!!』

 だがそれも虚しく、別の士官により腕を引っ張られて連れ出される。

『総員、退避───ッ!!!』


 直後、ブツン、と不快な音を立てると共に映像は途絶えた。




─── 俺達は、ただ蹂躙されるばかりだった ───




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SHINGA ー機獣惑星《アマログわくせい》ー 王叡知舞奈須 @OH-

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