華を唄う

ふわる

玉藻前

第1話

言葉には力があると言われてる。

俗に言う「言霊」と言われる物。

この世は万物で溢れている。

そして言葉も溢れている。

陰の言葉に陽の言葉。

私はそれを呪と読んでいる。

呪を読んで操る。

なぜって?

それは私が安倍晴明の血を引く

陰陽師だから…。






今朝から屋敷の中が騒がしいから早くに目が覚めてしまった。

「あぁ…うるさい。」

布団に深く潜り込む。

音を遮断して暗くて温かくて…感覚が落ちていく感じ。

深く深く落ちて辿り着くのはどこだろうか。

透き通る青に笛の音色…。

柔らかく繊細な音を奏でている。

だが音は途切れてしまう。

「彩葉様!まだ寝てらっしゃるのですか。

入学式だと言うのに初日から遅刻してどうするんです。」

檜山に布団を剥がされてしまった。

この檜山は私の周りのお世話をして貰ってる。

「うるさい檜山。まだ行く時間じゃないでしょ。」

頭をぼりぼりかいてる私に檜山はこう言った。

「彩葉様は女子と言うよりオジサンっぽい…」

「ひーやーまー??」

どす黒い感情が露わに出ても檜山はけろっとしている。

「はい、俺は出てますね。着替えましたら朝食にしましょう。」

障子を静かに閉めて歩き出すのを確認して

もう一度布団に入ろうとしたけどやめた。

「檜山に女子力という物を見せてやる」

さっきのオジサンっぽいって言われたお返しだ。




支度が終わったのでダッシュで食卓の方に向かった。

「檜山!どうだっ!!」

目をぱちくりしてる。

「どうとは…?」

「さっき檜山がオジサンって言うから

その…か、可愛くしてきたの。」

檜山は私の前に立ち額に触れた。

「彩葉様がその様な事言われるから熱でもあるのかと思いましたけど。ないようですね。」

笑顔で言う檜山になんだか悲しくなってきた…。

朝食を食べながら天気予報後の占いを見ていた。

「残念〜!今日の最下位さんはうお座のあなた。今日は大変な1日になりそう!そんなあなたのラッキーポイントは『桜』です。

皆さん1日頑張りましょう〜。」

今日はついてないな…。檜山にオジサン呼ばわり、可愛くしたら熱と間違われたり、占いで最下位と…。

「彩葉様、陰陽師たる者占いで惑わされないでください。」

「この占い結構当たるのよ?」

頭を降る檜山だけど入学式終わったら桜見に行こうかな。

「彩葉様、聞いてますか?」

「あ、ごめん何?」

「入学式に和馬様と一葉様が来られます。」

箸が止まった。

「パパとママも来るの?」

「はい、娘の晴れ姿だからです。後俺も見に行きますから。」

「檜山も来るのね。」

2人はいつも仕事で忙しくろくに家にも帰れていなかったから。

それでも私の為に来てくれるのが嬉しかった。

靴を履き身だしなみを整える。

「それじゃあ行くね。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」






彩葉様が見えなくなるのを確認して俺はその場でしゃがみ込んでしまった。

「っ…彩葉様…」

涙が止まらない。

彩葉様はまだ知らないでいる。

この事実に。

「俺はきっとまた貴方を守れない…」

後ろの気配に気づき振り向く。

「和馬様と一葉様。今お帰りでしたか。」

「済まないな檜山。君には彩葉の世話ばかりさせてしまって。」

「いえ、そんな事。」

涙に濡れた頬を拭いた。

後に立っている一葉様も悲しそうにしている。

この運命を知っているのは俺含め3人。

「今日は彩葉の最期の日よ。きっとやり遂げてくれるわ。」

一葉様の言葉に下唇を噛み締める。

そう今日は星に予言された日。

彩葉様が封印と引き換えに命を落とされる。







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