第2話

「はーい!新入生は花を付けてもらってー!」


校舎に入るとすぐに新入生でごった返していた。


「ほら君も。はい、出来た。入学おめでとう!」


「あ、ありがとうございます。」


上級生に声を掛けられ花を胸に付けてもらった。


「君は何組?」


「1-Bです。」


「じゃあ3階に登って左側の方に教室あるから。」


言われた通りに3階まで登って教室に入ろうとしたが少し違和感を感じて一瞬動きが止まった。

知ってるようで分からないこの感じ…。

体の奥の方で感じる何か。

分からないけれど心臓がドクンドクンとうるさい。

ドアを開けようとしていた右手はいつの間にか唇を触っていた。


「ねぇ。入んないの?」


頭をポンと叩かれて振り返る。


「なんで叩くの!ってゆうか今から入る……」


間違いない。

この違和感はこの男から出てる。


「友達出来るか心配?」


首を傾げて近寄ってくる。


「この歳で友達作りの心配なんてしないんだけど。」


「それじゃあ、彼氏出来るか心配とか?」


「はい?」


その時とんと軽く背中を押され教室の中に入った。


「大丈夫君は友達も彼氏も出来るよ。俺が保証する。」


何言ってるのかよく分からない人だけど

私の心を読まれた気がした。

彼氏ができるかは心配はしてないけど友達できたらいいなって思った。

小、中はあまりいい思い出なかったから。


「おー藤代ふじしろ。お前もこのクラスか!」


「えっ、雅久がくじゃん!久しぶり!」


「久しぶりだー。」


彼は藤代雅久と言うらしい。

少し面倒くさそうに友達と話をしている。

私は席に座りスマホをいじりだす。


「それより一緒に入ってきた女の子カノジョ?」


「いや、彼女じゃない。けどそれよりもっと深い関係だよ」


その瞬間だった。

なんの前触れもなく教室にいた人達が消えた。

教室にいるのは私だけだ。


「…まつ、いる?」


「はい、こちらに。」


呼ばれると私の側にいた。

松は私の式神。

式神の中でもかなり優れているので頼りになる式神だ。


「この現象どう思う?」


「主と思ってる事は同じかと。」


「松なら言うと思った。行くよ。」


これから行くところは人が消えた時に出た妖気の場所。

徐々に溢れ出すこの妖気は早いとこ止めないと大変な事になる。







「主…これ程の妖気どうするおつもりで。」


「さぁ分からない。でも手は尽くすよ。」


走ってる途中突然妖気が槍の様に襲ってきたがそれをするりと交わしていく。

息を吸い中指と人差し指を当て術を唱える。


風魔ふうま!!」


鋭く切れる風が妖気を切り浄化していく。


「主、このまま行けば主の身が持たないかと。」


「持たなくなる前に片付ける。」


走っていると妖気が段々濃くなって息苦しくなる。

すると大岩に座る白銀の女の人が見えてきた。

女の周りには妖気が踊っている。


「ねぇ落ち着いて。妖気を抑えて。」


「我ではない…止まらないのだ…妖気が。」


こちらを振り返る彼女の目には涙が浮かんでいた。


「主、彼女は三大妖怪の玉藻前またものまえです。」


玉藻前…彼女は確か大昔に封印されたはず。

なんで目の前に?

封印が解かれた?

でも内部からは封印は解けないはず。

なら誰かが解いた事になる。

封印を解いたのは誰…?


「…っ、そんな事考えてる暇ない。」


玉藻前が自分で抑えきれないのなら再封印するしかない。

けれどこの妖気の大きさを封印するのは代償がいる。

妖気の槍がまた襲いかかる。

でも今度は避けなかった。

横腹に槍が刺さり血がばっと飛び散る。


「主!!」


「いい…これでいいから。」


ポケットの中から札を取り出して血で札を紅く染める。


「松、貴方も封印に巻き込まれる。私から離れて。」


ぐっと唇を噛み締める松を無視して準備を進めていく。

血で濡れた札を握りしめ空に弧を描く。

すると描いた所から血塗られた札が出てきた。

右手の人差し指と左手を立て口元に持っていく。


「我は安倍彩葉あべのいろは…。我が、我がいのちを授け玉藻前を封印する。」


術を唱えると彩葉の足元から五芒星ごぼうせいが浮かび上がり光を放つ。

頭上で回る札は一斉に玉藻前に向かって檻を作り出し玉藻前は檻の中に入れられた。

後は手元にある札を貼るだけ。

私は封印と引き換えに命を落とすだろう。

一歩ずつ近ずいていく私に玉藻前はただ泣いていた。


「ごめんね。でもこの妖気と消えた人達を取り戻すには貴方をもう一度封印するしかないの。」


「…お前はあいつに似ているよ姿も面影も性格もな。」


くすぐるような小声を聞いた時だった。

光が札を突き刺しさらに奥の玉藻前の檻に突き刺さった。

何が起きたのか分からなくそのばに立ち止まる。


「よく頑張ったけど、君はがんばりすぎだね。」


頭をポンポンと撫でられ横を振り返ると

藤代雅久が隣にいた。


「なん…で?教室にいなかったのに。」


「さぁ俺も分かんない。けどそこにいる式神君が僕に助けを求めて来たんだ。」


その事を知って松の方を振り返ると息を切らしてる姿をみた。


「ごめん松…。」


松はただ微笑んで首を横に振るだけだった。


「さぁ封印ももうすぐ終わるだろうからまずは彩葉の手当だね。」


封印が終わる?

私はまだ最後の札を放ってない事に気がつくが、檻がみるみるうちに小さく石ころになっていくのを見た。


「私まだ封印の最後の札を放ってないのになんで封印が出来てるの?」


「それは俺が矢を放って札ごと檻に刺したから。だから放ったのは彩葉じゃなくて俺になるね。」


「それじゃあ命が…!」


あんなに大きな妖気を封印するには代償がいるのになんで彼は生きているのか。


「俺は平気な体なの」


そう言って藤代さんは微笑むけれど

もう、意味が分からなくなってきた。

そう思ってるとクラっと視界が歪み倒れてしまった。

体が全く言うことを聞かない。

多分さっきの攻撃で受けた傷のせいだろう。

血が全く止まっていなかったのだ。

松や藤代さんの声が遠くなる。

藤代さんが体を起こしくれるが私はすがるように彼の服をめいいっぱい掴む。


「藤代…雅久…。貴方一体何者なの……。」

















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