第3話

闇の中にいた

ゆらりゆらりと泳いでいるが浮いているのか沈んでいるのか分からない。

笛の音色が私を包み込む。

私はこの音色聴いたことがある。

きっとどこかでー…


目を開けたら見知った天井があった。


「…家。」


音はそこで途切れた。


「おはよ。目覚めたね。」


えっと思い声の方向に首を傾けた。

それはさっき助けてくれた藤代さんがいた。


「…何でいるの?」


「倒れた君を家に送り届けて

ついでに傷を治しといた。」


ばっと横腹の傷を見たが血も傷も跡形もなく消えていた。

あれ程の傷しかも貫通していたのに

こんな短時間で治るとは到底考えられない。

すると藤代さんの右手にある笛に気がつく。


「その笛は…?」


あぁ、と言い笛を見せてくれた。

細かい模様に艶やかな笛ではあるが年期がかなりあると思われる。


「君の傷を治したのはこの笛。この笛は魔法の笛なのさ。」


「はぁ…謎なんだけど…。」


「どうしたの?」


「どうもこうしたもない、貴方は不思議だらけなのよ。あの戦いの場に現れ玉藻前を封印してそれでいて死んでいない…それで…」


ベットの横で頬杖をついて彼は言った。


「…僕はねそういう事が出来る人なの。」


言ってる事は意味わかんないけれど

不思議と彼の瞳から目を逸らすことができなくて深い紫色の瞳が何を想わせるのか知りたかった。

するとドアの向こうから声がかかった。


「彩葉様、檜山です。」


「は、はい!入って。」


檜山が部屋に入ってきて顔を見るなりびっくりした。

目は赤く腫れていて顔は青白い。


「どうしたの…何かあった…?」


「申し訳ございません…。」


頭を下げて謝る檜山に私はたじろいだ。


「彩葉様にはずっと黙っていました。本当は今日貴方が命を落とすのを俺は見えていたのに…。」


「見えていた…どういう事?」


「俺は未来を見る事が出来る力を持ってるんです。」


きょとんとしてる私に気づき藤代さんが教えてくれた。


「あれ、覚えてない?

昔ぼろぼろの彼を見つけて屋敷の使用人させてたじゃん。」


それは昔私が安倍清明あべのせいめいだった頃の話だろうが

私が彼血を強く引いているだけ過去の記憶は…

………過去の記憶…?


「藤代さん、貴方は過去の記憶があるの?」


「あるけど…。その顔からすると君は記憶がないみたいだね。」


困惑している私に檜山が教えてくれた。


「前にお話しましたね。彩葉様は陰陽師である安倍晴明の先祖返りだと。」


「…うん。」


「ですが、記憶を引き継ぐ事は限られた一部のみなのです。昔に遂げられなかった事が強く心に残り記憶が引き継がれる。」


引き継がれるのはごく一部の人しかいないと檜山はそう言ったけど、

…私はさっきの音色どこかで聞いたことがある。

淡く絡み合うようなあの旋律を。

でもそれは記憶と言えないのかな…。


「で、檜山も先祖返りなの?」


「いえ、俺は八百比丘尼やおびくにというで不老不死の者です。」


「檜山が…まじか…。」


あんぐりしている私はに藤代さんは付け足してくれた。


「八百比丘尼は占いとか未来を見通す事が出来るから君の死亡予知夢も見えていた。」


「それで見ていた…という事ね。」


「あ、そうだ。」


ブレザーから出されたのは手のひらサイズの石ころを渡された。


「…この石は?」


「さっき玉藻前を封印した時のやつだよ。

これは昔晴明が封印した妖なんだ。

君が持って置くといい。」


何故と聞く前に彼の唇が動く


「これは君の記憶の道を開く物だから…」

















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